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エジンバラNOW

エジンバラ特派員(会員966) ジミー山内のプロフィール

1974年生まれ。 横浜に生まれ、中・高・大と鎌倉、湘南近辺で学生生活を送る。20歳頃からモルトを飲み始めて今にに至る。最初に飲んだものはボウモアでした。その後、アメリカ・ボストン、イギリス・ロンドンを経て現在エジンバラの近くの漁港ニューへーブンに住む。エジンバラ大学に在籍。 好きな酒は、やはりモルト&エール(無論、生温いやつです…)。趣味はロッククラ イミング、テコンドー、コーヒーそしてジャズ。

ジミー山内
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Edinburgh Now:021-040 Edinburgh Now:041-060



Edinburgh Now: 060 2005.03.23 英国は革新的?
Edinburgh Now: 059
 2005.02.23 本邦初公開(?)の蒸留所達 其の5 Kininvie蒸留所
Edinburgh Now: 058
 2005.02.03 本邦初公開(?)の蒸留所達 其の4 Balvenie蒸留所
Edinburgh Now: 057
 2004.12.11 クリスマスシーズンの新商品
Edinburgh Now: 056 2004.12.01 本邦初公開(?)の蒸留所達 其の3?Braeval蒸留所
Edinburgh Now: 055
 2004.11.16 スコットランド、NYC、アイルランド、
                     そしてノルウェーに続いて紫煙をパブ・レストランからの締め出しへ
Edinburgh Now: 054
 2004.11.09 「本邦初公開(?)の蒸留所達 其の2?Allt-a-bhainne蒸留所」
Edinburgh Now: 053
 2004.10.29 「本邦初公開(?)の蒸留所達 其の1−Caperdonich蒸留所」
Edinburgh Now: 052
 2004.10.02 ウィスキーフェスティバル 其の2
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 2004.09.17 ウィスキーフェスティバル 其の1
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 2004.08.11 ウィスキーショップ夏の陣其の二
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 2004.06.22 クライゲラキリターンズ3
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『エジンバラNOW』の文章に関する著作権はスコッチ文化研究所が有しており、無断での使用を禁じます。

英国は革新的?

Edinburgh Now: 060
2005.03.23
 

 
 

少しばかりの間エジンバラを遠くはなれ、アメリカにいるのでこれからご紹介す る新しいウィスキーが実際にどのような外見を持ち、どのようなテイストなのかを実際に試したわけではないが、ともかく真新しい製品なので紹介を。

英国には数多くの教会が存在する。教会のスタイルと、それが街のどこに座するかということは「その国の典型的な」街の姿を決めるのに非常に重要な役割をなしている。欧州の多くは街の中心を教会が決める、というスタイルが多いが、 英国、特にスコットランドに関してはどちらかというと教会は様々なところに点在し、なおかつそのスタイルもこの国の宗派の複雑さもあってか多種多様である。事実、自分が住むNewhaven港に面するフラットも、教会である(なんと、階段の壁には昔の神父の胸像が埋め込まれている!)。

さすがに教会が住居施設に変わってしまった例は少ないが、ナイトクラブ(!)や、コンサートべニューになった例は数知れない。大きなホール、高い天井、それなりの収容力、アクセスのしやすさ(教会という性格上、アクセスは重要だ)は最高とは言えないまでもそれなりの音響を備え、夏、エジンバラフェスティバルで数多くのフリンジ の受け入れ先となっている。

そんな教会のひとつでこの前自分がひいきにしているミュージシャンのコンサートがあったので遊びにいってみた。会場は満員。知り合いも何人かいる。と思いながら、ふと見渡せば以前仕事で一緒になったウィスキーライターがいるではないか。前半のセッションが終わって彼に近づいてみると以前にもまして元気な様子。話を聞けば明日から仕事でオークニーに行くのだとか。最近のお互いの動向について情報交換をしていると、突然思い出したように彼が「J&Bの新しい製品について知ってるか?」と聞いてくる。何のことかよくわからなくて、きょとんとしていると、彼が説明を始めた。「そろそろパブやクラブなんかにお目見えすると思うけど、ともかく限りなく、無色に近いウィスキーなんだよ。どうも、3rdフィルのカスクかなんかを使っていて、さらに−6℃程度に冷やしてその上で濾過しているらしい」。 なるほど、それがどうもネーミングの由来ら しい。

一頃よりだいぶ下火になったものの、ウォッカベースのアルコールがクラブ通いの若い連中を中心に大流行し、”Alcopop”という名前まで登場したほどだ (子供時代の甘いお菓子の代名詞であるロリポップとアルコールをかけた造語で、「お子様」が飲むアルコール、程度の意味がある)。そういった若い層を取り込むべく作り出したのが「J&B −6」なのではないだろうか?すでに試飲した人間もいるらしく、興味深いことに味もなかなかだとか。

以前「真っ黒な」ウィ スキーから180度方向を転換してのマーケティング。「伝統の国」と評される英国は、教会やらウィスキーやら、いやいやなかなか革新的な国なのかもしれない。

 
 

本邦初公開(?)の蒸留所達 其の5
Kininvie蒸留所

Edinburgh Now: 059
2005.02.23
 

 
 

2月も早くも下旬に。この時期になると、毎日日の出、日の入りの時間が合わせて5分近く延びる。つまり、1週間も経てば30分近く昼の時間が多くなるという、なかなか劇的な変化を味わえるわけである。これで3月の終わりに夏時間が始まると一気に7時近 くまで昼の時間が増える…。既にクロッカスは咲き始め、桜もそろそろ開花する。春の訪れである。

前回はBalvenieまでお話をしたが、今度はその隣りの蒸留所の話を。
隣りといえば、 当然Glenfiddichがまず念頭にあるかと思うが、我々が訪れたのはWilliam Grant Sons.が所有する第三の蒸留所、そうKininvieである。ここは他の二つと違って非公開なのでかなり珍しい経験をしたことになる。

 
 
 
 

Convalmore, Balvenie, Glen Fiddichと昔の線路沿いに横一列に蒸留所が並んでいて、 その様子はCraigellachieからDufftownに向かう道からもよく見える。が、Kininvieは一般公開されているだけではなくて、相当奥まったところにあるので、勇気を出してWilliam Grant & Sons.の敷地内をぐるぐる回らないと見つからないだろう。蒸留所の裏はFiddich川。この辺では珍しく、相当に切れ込んだ「峡谷」という雰囲気を出しているのだが、道路、線路、一列に並んだ三つの蒸留所(Convalmore, Balvenie, Glenfiddich)、そしてその後に隠れるようにして位置するKininvieの背後にFiddich川 が流れているということに気がつくのはなかなか至難の業だ。

KININVIE DISTILLERY
 
     
  そんな少し秘密めいたGlenの雰囲気とは裏腹に、Kininvieの作りそのものはいかにも素っ気ない。飛行場の格納庫のように入り口の大きく開いた「トタン製」のような建物の中にずらっと蒸留器が並んでいる。
「Kininvie蒸留所」は蒸留だけを受け持っているので、発酵までの工程を全てBalvenie蒸留所でまかなっている。他の蒸留所の同 一敷地内に有り、しかも発酵までの器材が全くないのでここが「蒸留所」といわれても今一つピンと来ない。これが1800年代につくられていて、しっかりとした石造りの箱に収まっていればそれでもなお蒸留所の赴きを持っていたかもしれないが、なんだか非常に簡素な建物でBalvenieの増産用に少し離れたところに建て増された物だと言われても納得してしまいそうだ。
 
     
 
Kininvie Kininvie
 
     
 

そんな少し秘密めいたGlenの雰囲気とは裏腹に、Kininvieの作りそのものはいかにも素っ気ない。飛行場の格納庫のように入り口の大きく開いた「トタン製」のような建物の中にずらっと蒸留器が並んでいる。
「Kininvie蒸留所」は蒸留だけを受け持っているので、発酵までの工程を全てBalvenie蒸留所でまかなっている。他の蒸留所の同 一敷地内に有り、しかも発酵までの器材が全くないのでここが「蒸留所」といわれても今一つピンと来ない。これが1800年代につくられていて、しっかりとした石造りの箱に収まっていればそれでもなお蒸留所の赴きを持っていたかもしれないが、なんだか非常に簡素な建物でBalvenieの増産用に少し離れたところに建て増された物だと言われても納得してしまいそうだ。

とはいえ、蒸留器の形は奇妙なまでに独特。ずんぐりとした再留器と、背の高い初留器。再留器の方には指輪のような膨らみがあり、その上から比較的角度のついたライ ンアームが伸びている。
その隣りの初留器はタマネギ型。丈はものすごく高いという わけではないのだが、再留器と比較してしまうからか、高さを感じてしまう。スピリットセイフは階下に位置していて、やはりまだ新しいのか随分と綺麗な印象だ。

辺りを うろうろしながら、Mortonが説明を一生懸命してくれるのだが、なにかしっくりこな い。視覚的なものなのか、何かが奇妙なのである。しばらく歩き回っていて気がつい たのだが、この初留器、角度によってなんだか「かしいでいる」のである。ラインアー ムが延びる方向とほぼ逆、つまり我々が通常蒸留器と正対する方向に向かってタマネギがすぼむ辺りから微妙に傾いている様に見えるのである。なんだか一見しただけではわからない出来の悪い陶芸品の様…。
結局このことについてだれにも聞く機会がなく、 実際にかしいでいるのか、それとも目の錯覚なのか判然としなかったが、どうも全て の初留器に同じ印象を受けたので、なにか意図したものなのかもしれない…。

spirts safe

sprits still

wash still
 
 

本邦初公開(?)の蒸留所達 其の4
Balvenie蒸留所

Edinburgh Now: 058
2005.02.03
 

 
 

新年も明け、早一ヶ月。大変心苦しいが、日本に帰ったり、私事の整理などで、ここ のところ全く更新をしていなかった。が、今年も気を取り直して宜しくお願いします。

さて、以前のスペイサイドの蒸留所巡りを続きを。と言っても今回は、一般に公開さ れている蒸留所である、Balvenieの話を挟みたい。

 
     
 

今はもう稼働していないConvalmore蒸留所と兄弟分のGlenfiddich蒸留所とに挟まれて立地する同蒸留所は、Glenfiddich蒸留所とは随分違ったイメージを外観から受ける。Dufftownのタウンセンター側からGlenfiddichを訪れれば、大きな駐車場と、そ れと見て小綺麗なレセプションがいかにもビジター向けにしつらえたものだというこ とが分かるし、華やかな色合いのガイドの女性が辺りを歩いていたりする。実は外観 に対するこだわりは更に行き届いていて、通常の蒸留所にありがちな建物を伝うようなパイプ群は観光客が訪れる範囲では目に付かないように地中を通しているという徹底振りである。その建物の間を抜け、瓶詰め工場を脇に進むとBalvenie蒸留所が現れる。瓶詰め工場を越える辺りから、いかにも蒸留所という雰囲気は高まるし、道路沿いから延びるDufftown-Keith鉄道に取り残されたボロボロの器材などはそれまで華やかだった観光客向けの蒸留所と強い対比を見せている。

 
     
 

本来ならとっくに観光客の受け入れシーズンを過ぎているはずであるが、ここに暫臨時のスチルマンとして働くデンマーク人のMortonに中を案内してもらった。その日、彼は瓶詰め工場で働いており、先ず瓶詰め工場の案内から。他の大きな会社の瓶詰め工場と比べればサイズは小さめなものの、このような工場がDufftownのような片田舎にある意味は大きい。蒸留所で働くスチルマン達は、それなりの専門知識が必要で誰もが慣れるものでもないし、労働条件も、勤務時間、雇用の安定性という両方の意味で必ずしも万人受けするわけではない。

 
       
 

他方、瓶詰め工場はバイトという形で高校生でも出来るし、家庭のおばさんでもあまり家事等を圧迫しないで出来る。つまり、ウィ スキー以外これと言った産業のないこの地域にとっては非常に重要な雇用源なのであ る。興味深いのはWilliam Grantや、J. M. Mitchel等の家族経営のウィスキー会社が特にこの点について大きな重点を置いていることだ。これは創設者のそのコミュニテ ィーにおける当時の地位、地域情勢、ひいてはウィスキー生産が主に人里離れたとこ ろで多く行われていた等々と非常に密接な関係がある。雇用のみならず、利益の地域への還元(交通の整備や、病院、文化施設などの建設)等も多くの蒸留所の創業者やその一族が行ってきていて、ウィスキーの歴史から企業の公共福利への貢献の歴史の縮図を見ることも出来るのである。

 
       
 

その話はともかくも、Mortonに案内されるがままにモルトバーンへと向かう。薄暗い中には人気はなく、ひっそりとしていた。聞けば前回のモルティングは二週間ほど前に終わったのだとか。いくつかの機材を見せてもらう。伝統的なショベルによる攪拌ではなく、空気圧を使った攪拌機などはなかなか面白い。
一階のみならず二階にも同様のフロアが広がるが、ここには観光客向けの後なのか、 自社の畑で取れたオプティック種の麦と、買い付けのオプティックが別の山になっていた。フロアの奥へと向かうと、妙な風呂桶のような槽がある。無論、浸麦槽なのだが、若干他とは違う浸麦方法をとるらしい。下に降りると、コンクリートの間から残った麦が芽を出していた。




 
 
  
 
 

キルンに向かう。
Springbankのそれと比べるとサイズが随分大きい。窯のサイズも大 きいし、改修されてより近代的な形になっている。Springbankは石炭とピートを同じ窯にくべるが、こちらはピート専用の窯が備え付けられていた。材質が金属で明らかに隣の煉瓦造りの窯と見た目が違うため、稼働当初はおそらく同じ窯で焚きつけていたのだと思われる。実際にここで生成されるモルトの量は全体の約一割だとか。これも、William Grant社の方針で、ウィスキー生産の伝統を保つと言うことが主たる目的らしい。通常なら、「いやいや、そんなこといったって、実際はマーケティング・ 宣伝戦略のためでしょ?」と斜に構えてしまうところだが、瓶詰め工場とあわせて、なにやら上記の福利厚生と通ずるものを感じる。そういえば、ビジター用のサービスも季節的な変動はあるものの、地元に重要な雇用を生み出しているわけで、少 しWilliam Grant社に対する見方を変えてしまった。

 
 
  
 
 

一通りモルトバーンを見た後で、スチルハウスへと向かう。
スチルハウスは道を隔て た反対側。中に入ると、どうも他の蒸留所とは随分趣が違うことに気が付く。まず地 上から入ったはずなのに、屋内では2階部分になっている。スチルも、なぜか再留器 の内、二器だけが別な場所に。明らかにスチームによる加熱システム移行後に増設さ れたと言うことが分かる。Caperdonich蒸留所もしかりだが、どうも石炭を使わない ことを前提に作られた蒸留器はあのどっしりとした釜の貧相な下側が見えてどうにも 良くない。全体的に狭いし、Glenfiddichの様に蒸留棟内全体を鳥瞰できるような場 所がないのも、おもしろさに欠ける。外からの雰囲気に比べあまり中は魅力的ではな いのが残念だ。

 
     
 

面白いことに、増設された再留器を抜け、屋の反対側へと抜けると、どこからともなく強いピート臭が。周りを見渡すと脇にはスピリットレシーバーがあり、どうやらそこから匂っているようだった。Balvenieのピートレベルはかなり低いだけに、外に漂 う臭いからピートがかぎ取れるのは不思議な話。まぁ、いろいろあるのだろうからそ の辺は深くはつっこまなったが…。

 
 

クリスマスシーズンの新商品

Edinburgh Now: 057
2004.12.11
 

 
 

エジンバラが活気付く時期が二つある。
一つは夏。フェスティバルシーズンを中心に波のように観光客が押し寄せる。
フェスティバルの最盛期などは宿泊場所が全くなくなるということも珍しくない。

もう一つはクリスマス。去年、この国、ひいては欧米ではクリスマス商戦がどれほどのものか紹介をしたが、エジンバラという街はそういった商戦でもある種独特の地位を占めている。純粋に買い物だけが目的であればグラスゴーに行くほうが良いのであるが、中世の街並みを可憐に彩るイルミネーションを楽しもうと思うとやはり、観光 地であるエジンバラが一番に上がるわけである。小さいながらも「一国」の首都であり、 ほぼ何でも揃う。クリスマスシーズンは結構海外旅行のトラフィックも増え(クリスマス・バイと観光を兼ねるため)夏に負けないくらいの国際振りを見せるわけである。

クリスマスシーズンは欧米諸国にとっては、最大の書き入れ時であり、あらゆるマー ケットに新製品が投入される。本格的な商戦は11月終わり頃から始まる(アメリカで言えば、感謝祭が終わる頃)ので、日本のボーナス商戦よりも若干早いが、この時期を何らかの形で逃すと、その企業の業績にもろに跳ね返ってくるわけで、どこの会社も必死になって新製品を市場に流通させるべく躍起になるわけだ。

特にウィスキー等、製品投入に比較的時間がかからないもの(特に独立瓶詰め業者など)にとってはこの時期になると、商戦に遅れまいと、最後の最後まで血眼になりながら製品の投入を図るわけである。従って、我々、小売の人間にとっては売り手としても忙しい時期ながら、毎週のようにに新製品に目を通す日々でもあるのである。も しこれからの数ヶ月、「おや、新しいボトルが増えたな?」とどこか、日本のバーで思われたなら、それはメーカーが今、このクリスマス商戦に向けて必死に市場投入した結果が日本に波及したものであるかもしれない。

 
     
 

ここで、数多くの新製品から興味深いものを二つ紹介したい。

まずは、Glenmorangie Artisan Cask。
今週、ようやく届いたばかりの新製品。何でも、アメリカンオークを自然乾燥してシーズニングし、新樽として使用したもの。新樽のため、木の表現が強いからか、熟成年数は9年とかなり若くなっている。試飲は未だ。

次はIsle of Jura 5年。
写真で判るように、Royal Mile Whiskies限定販売のもの。日本市場向けにおととし投入された3年同様、非常にスモーキーに仕上がっている。ピーティーさ、海藻臭さなどは薄い。基本的に、Jura3年がその後2年でどのように「成長」 したかを確かめるにはもってこいだ。不思議なのは当初700本がボトル詰されるはず だったが、瓶詰以前の段階で300本まで本数が少なくなっていた。誤ってこぼしてしまったのか、どこかにまわされたのか、RMWが関与する以前の問題なので誰も理由を知らない・・・。しかし、The Whisky Exchangeからも同様なボトルが販売されているのには、妙な因縁を感じる。

他にもChieftain'sのCaol Ila Medoc Finish( !!)、Benromach 21y Tokaj Finish(?)、 Peaty Benriach、Talisker 18y等、食指を動かしたくなるものばかりが並んでいるが、 いずれまたレポートをしてみたい。

Glenmorangie Artisan Cask
Glenmorangie Artisan Cask


Isle of Jura
Isle of Jura 5年
 
 

本邦初公開(?)の蒸留所達 其の3?
Braeval蒸留所

Edinburgh Now: 056
2004.12.01
 

 
 

Allt-a-bhainneを後にして向かった先はBraeval。場所的に言えば、スペイサイドの中でも最も内陸に位置し、見つけ辛い蒸留所の一つ。ダフタウンからトミントールに向かう道をひた走ると、Allt-a-bhainne、Tamnavulinと蒸留所を越えて行く。それまで比較的平坦だった風景は次第に褶曲を増し、いかにもハイランドらしい雰囲気へと 変わって行く。丘上に聳えるGlenlivetの壮大な蒸留所を右に、暫く走ると周囲に何も無い、孤立した村、トミントールへと入る。その手前、小さな橋を渡るちょっと前に左へとハンドルを切り、細い農道のような道を走り切ったところにどことなく地中海風の建物が見えてくる。

 
 

壁はスコットランドではありえないほど白く、屋根は対照的なマットブラック。近づけば草が隙間からぼうぼうと生え放題なものの、石を噴い た歩道が我々を建物中央に位置するパティオのような中庭へと導く。中庭へとやってきて、ここが本当に地中海的な場所だと確信した。スコットランドでは非常に珍しい空間なのである。まぁ、地中海は言い過ぎなのかもしれないので、パリあたりにしておこうか?ともかく、どこか秋のカソリック寺院に紛れ込んだようだった。

Braeval
 
 

中へ入ると雰囲気はがらりと変わり、いかにも「工場」的な雰囲気へ。面白いことに、受ける印象はAllt-a-bhainneとは違い、どちらかというと無機質な印象を受ける。サ ンダーバードでも、ウルトラマンでもない。もっとコンパクトで、むしろ窮屈な空間。 巨大なスイッチボードは無く、風洞実験室に取り付けられたコントロールセンターの様な小さな部屋にコンピュータが数台と、取り外された機器パネルの名残。「やっぱ り、Allt-a-bhainneの方がいいなぁ…」というDavidのコメントにも納得。

Braeval
 
 

Allt-a-bhainneと同時代に、同様な設計思想の元で作られたはずなのだが、結構な違いがあるのは面白い。概観で言えば、明らかにBraevalに軍配を上げるのだが…。

 
 

スコットランド、NYC、アイルランド、そしてノルウェーに続いて紫煙をパブ・レストランからの締め出しへ

Edinburgh Now: 055
2004.11.16
 

 
 

スコットランドに強大な自治が認められるようになってから約四年。念願の新議事堂もHolyrood Palace隣に完成し(実は、ケンケンゴウゴウの論議があったのだが…)、 意気揚々のスコットランド議会・自治政府だが、今回のこの議決はスコットランドの独自性を欧州域内のみならず世界にまざまざと見せつけることとなった。

NYC、アイルランド、ノルウェーに続き、スコットランドもパブ・レストラン等の公共性の高い場所での禁煙に関する法案が10日、可決され、2006年春以降はスモーカー達が肩身の狭い思いをすることになるようである。ただし、上記のようにこれはスコットランド独自の法律であるため、英国の他地域には影響はない(とはいえ、この決定がイングランドを初めとする他の地域に大きな影響を与えることは間違いない) 。

この決定は基本的にはパブ・レストランで働く従業員が始終受動喫煙を強いられ、健康を害するという状況を改善することを目的としているものだが、「sick man of Europe」(欧州の病人)という嬉しくないレッテルを貼られているスコットランド人(食文化から来る肥満、高度のアルコール摂取習慣、喫煙の文化等から来るとされている)にとってはこれがこのレッテルをぬぐい去る良いチャンスになるかもしれない。 実際、アイルランドでは三月に同様の法律が施行されて最初の一ヶ月で七千人が禁煙を始め、煙草の売り上げが17%も低下している。

ウィスキー飲みにとっては、全く薫りが分からないタンブラーグラスとパブ中に充満する煙草でテイスティングもへったくれもなかったが、少なくともその一つは改善の見通しが立ったと言うところだろうか(スモーカーの皆さん、ごめんなさい!)

以前、スコットランドでの禁煙に関する記事を書いた頃は、「約数年で…」と言うことだったが、実際はそれよりも遙かに速いペースで事が動いていた…。次はぜひグラ スに関する法案を!

 
 

「本邦初公開(?)の蒸留所達 其の2?
Edinburgh Now: 054
2004.11.09
Allt-a-bhainne蒸留所」
 

 
 

閑散とするCaperdonich蒸留所を後にして、次に向かったのはAllt-a-bhainne。英語発音だとアルタベーンだが、実際は名前自体はゲーリック由来なので、その発音に従 うと「アルタヴァーンニャ」になるそうだ。この蒸留所はスペイサイドの中でも特に人里離れたところにあり、近くを偶然通りかかったドライバーの度肝を抜く建物でも ある・・・町中にあればさほど奇抜ではないかもしれないが、こんな山奥に一体何の秘密研究所か?と、妙な国家陰謀説でも想像したくなるような雰囲気がある。

日頃から「Allt-a-bhainneは蒸留所で働くものにとっては夢のような場所なんだぜ」 というDavidの話を聞いていただけに、ワクワクして中に入ってみてビックリ。思わず笑みがこぼれてしまった。今まで見たどんな蒸留所とも違う!一言で言えば、先程の国家陰謀説を更に信じたくなるような作りなのである。大きな体育館のような室内 に発酵&蒸留に必要な全ての設備が収められている。蒸留器の目の前にはウォッシュ バックが。その横には巨大なコントロールパネル。その前には銀色に光る異様な形状 のマッシュタン。全てが 見通しのきく巨大な「箱」の中でひしめき合い、それらを隔てる壁は一切ない。 Davidの言う「夢」とはまさにこのことなのである。Glen Grantなど、通常の蒸留所 は大体それぞれの「工程」毎に違った箱に収められ、それらを行き来するために小さ な階段を上がり、いくつかのドアを越え…という動作が不可欠だ。その為に彼らはポ ケベルを携帯し、なにかある工程で不備があればコンピュータがポケベルで注意を喚起し、現場に急行、ということになっている。これらの「余分な」動作 はAllt-a-bhainneでは必要ない。何せ全てが「一つ屋根の下」にあるのだから。

 
     
  これはこの蒸留所が1975年操業開始ということに関係していることは間違いない。 「近代的」なシステムなのだ。だが、面白いことにその「近代」が逆にこの蒸留所に現在の蒸留所のスタンダードなシステムである、コンピュータ設備の導入を異常なまでに遅らせてきたことも事実なのかもしれない。コントロールパネルは異様なまでに古く、なにか旧共産圏の原子力発電所を彷彿とさせるし、この「箱」全体がどこか 「70年代」の空気を醸し出している。自分の世代にとっては「地球防衛軍」の基地だし、英国人にしてみればまさしく「サンダーバード」の基地ということになるので はないだろうか?
Allt-a-bhainne
蒸留器の真ん前にはローワインチャージャーや、ウォッシュバックが立ち並ぶ・・・
 
 

 
 
残念ながら蒸留所は現在閉鎖中で、開始のめどは立っていないと言うが、現在Chivas 系の休止蒸留所では一番最初に再稼働するであろう蒸留所だそうである。なぜかフェイント臭の漂うウォッシュバックと、コントロールパネルの脇にあった2002年7月を指したままのカレンダーが印象的だった・・・
 
 
Allt-a-bhainne
David
 
  大きくてなかなか全体が撮せないが、これで「地球防衛隊の基地」という表現が伝わるだろうか?銀色に光る円盤、マッシュタンが後ろのコントロールパネルと何とも言えないコントラストを生んでいる・・・   Davidがおどけるコントロールパネル。いかにも「70年代!」という感じがよい。  
 

「本邦初公開(?)の蒸留所達 其の1
Edinburgh Now: 053
2004.10.29
Caperdonich蒸留所」
 

 
 

9月からウィスキー関連で様々なことがあったのだが、個人的に印象に残っているのは京都のHorie's Barの堀江氏にお会いしたこと。エジンバラのパブで「茶色」(熟成された蒸留酒のこと)について熱く語っておられたのには本当に感動した。

その後、クライゲラキホテルの皆川氏が去年同様日本に戻り、三週間ほどまたまたホテルのバーに立つことに。今回は九月初めに十日程ホテルのバーに立っていたので、 余りギャップを感じることなく仕事に専念。

今回は去年紹介したG・グラントのスチルマンであるDavidにChivas系の閉鎖された蒸留所に連れて行ってもらったのでその辺を中心に紹介をしたい。それらの蒸留所の内部は一般には公開されていない物なのでなかなか貴重かも。また、もう一つ大きなおまけもあるので乞御期待。

 
     
  第一段である今回はCaperdonich蒸留所。G.GrantとRothes村の目抜き通り(!)を挟んだ向かい側にあるこの蒸留所はここ数年稼働が全くされていない。入口にある大きなパドロック(南京錠)を開けて中へ入ると、閑散とした薄暗い空間が広がる。どう もG.Grantと比べると「箱」である建物も安普請といった感じで、どうも「蒸留所にやってきた!」という気がしない。いろいろな器具は取りさられ、スチル、ウォッシュバック、マッシュタンなど比較的規模の大きい器機ばかりがやたらに目につく。スチル周りは写真でも分かるように驚くほど簡素に作られており、これがとても19世紀の終わりに作られた蒸留所とは思えない「軽さ」がある。

「恐らくこのまま潰されるんじゃないかな・・・」とDavidが何の感慨もなさげに呟く。所々取り外されたパーツは他で転用されているとのことで、「解体待ち」という感は拭いきれない。が、いったん外へ出てみると事態の難しさがよく分かる。G.Grantに比べ、スペイ川がより近くを流れていたのだが、両蒸留所ともこの水を冷却水として大量に使用していて、Caperdonich蒸留所の敷地内に両蒸留所用のくみ取り装置があるのだ。他にも様々な資源を共有しており、簡単に更地にしてしまうわけにはいかないのだそうである。

更に大きなジレンマになっているのはRothesのもう一つの重要な産業である鉄鋼機器メーカーForthysの存在。Rothesがウィスキー産業に沸く1890年にこの村に設立されたこのメーカーはスコットランドのありとあらゆる蒸留関連の器機のみならず、世界中で蒸留と名の付く事業(アルコールであると無しにかかわらず)に深く携わる一大メーカー(日本の多くの蒸留所はやはりこの会社と関わりがある)。この会社の設立以来の事業所が正にCaperdonichの裏庭にドンと構えているのである。既に数年前に敷地の一部を売却したそうだが、Forsyths側としては稼働していない蒸留所の敷地も是非入手をしたいそうだとか。Chivas側もまんざらではなさそうなのだが、問題は先程のG.Grantとの共有部分。仮にCaperdonichを売却して、そこにある共有施設を移動すれば大きな投資になるし、かといってその部分だけを特別契約でノータッチにするのも・・・。

うーん、どうもこの蒸留所には暗い話がつきまとっているようである・・・。
Caperdonich

Caperdonich

Caperdonich
 
 

ウィスキーフェスティバル 其の2
Edinburgh Now: 052
2004.10.02
 

 
  当初は試飲を目的とした参加だったのだが、ブースを回るに連れて段々と知り合いと会う形になってきた。

先ずはMark Watt。生まれは何とMacallan。大阪方面の某百貨店が毎年秋に開催している英国フェアに去年、クライゲラキホテルのバーマンとして参加していたが、実際 にはクライゲラキホテルで働いていたのはずいぶん前で、その後大学に通う傍らSMWS、 ロイヤルマイルウィスキーズと移り、現在はピアレスシリーズでおなじみのダンカンテイラーで働いている。ダンカンテイラーを除けば彼と自分自身の職歴は殆ど同じ。 実のところ、SMWSで働くきっかけは彼が辞めて欠員が生じたからだった…。

今回彼が立つブースは当然DT。RMW主催のウィスキーフリンジに続き、彼がDTのブースに立つのを見るのは二回目。今回は、オーナーのEuan Shand氏はおらず、彼がほぼ一人でこのブースを仕切っている。これからは彼が渉外担当だとかで、皆さんにお目にかかることが出来るかもしれないと言っていた。11月には再度、先程の大阪の百貨店主催の英国フェアの為に来日するとのこと。関西の方は是非、一度彼に会ってやっ て下さい。「あぁ、スコットランド生粋のウィスキー野郎はこういう奴なんだ」と納得するには彼の飲みっぷりを見るのが一番。

続いてダグラスレイン。ここにはMarkの幼なじみのSusan Webster。彼女もまたSpeysideの生まれで、父親は現在Glen Rothesのスチルマン。いつも「今度クライ ゲラキで働くときは父を訪ねてよ!」という割には、なかなかアポをとってくれない …。彼女もまた華麗な職歴を持っている。RMWに始まり、Adelfieと移り、現在はDLに 身を置いている。ここにはかつてSpringbankに在籍していたDavid Stark氏も働いていて、ブースはなかなか賑やかだった。

と、いつもの連中と話をしていると、後ろにR. Paterson氏の独特の声が…。振り返 れば、人だかりを前にいつもの調子でDalmoreを振る舞っている。その横にはJuraのマスターディスティラーであり、ブランドアンバサダーであるWillie Tait氏。人が一瞬引けたのを見計らって挨拶。少々会話をするが、さすがに人気が高く、早々に退散。

何より嬉しかったのは、Philip Hills氏に会えたこと。SMWSの創設者で、現在 はLochsideとGlen Eskがあったモントローズで執筆活動をしている。たった一回、 SMWSで働いている頃、会っただけだが、彼の著書であるAppreciating Whiskyは自分 のウィスキーに関しての座右の著であるし、彼自身の業界に対するある種の懐疑的な眼差しは、現在の自分のウィスキーに対する視点にある種の指針を与えてくれた。久 しぶりの会話を楽しんだが、聞けば近く新たな著書が2冊ほど出版されるとのこと。 楽しみである。

と、様々な人に一同に会えるというのはやはり大きなイベントならでは。結局閉館の 8時まで居座りその後はArther Motley(旧SMWS&現RMWの樽選定責任者)やらSMWSのバーマン、RMWの連中とグラスゴーの夜に繰り出し、ウィスキー談義に花を咲かせたのでした。

 
 

ウィスキーフェスティバル 其の1
Edinburgh Now: 051
2004.09.17
 

 
  スコットランド初となるウィスキーフェスティバルがグラスゴーで開かれた。本来ならばそれに出店するクライゲラキホテルの留守を預かるべく、スペイサイドに滞在するはずだったが、急遽2日目にオーストリアに出なくてはいけなくなったために、予定を早めてエジンバラに戻ることに(前回のチョコレートはその帰りがけによったも の・・・)。

RMW(ロイヤルマイルウィスキーズ)に行けば、出展者用に配られたチケットが余っているので、行ってみたらどう?と言われ、早速参加を決意。初日分に参加することに。初日は金曜午後2時からのスタートだが、3時辺りに行ってみるとまださほど人がいない。聞けば、大体この二日間で600枚を売ったとか。ウィスキーフリンジが一日で400人集めたことを考えればちょっと少ないかな?という気がするが、未だ第一回目。エジンバラフェスティバルとは縁もゆかりもないイベントということを考えれば、たいしたものである。

入場してすぐにクライゲラキホテルのブースが。バーマネージャーの皆川氏と支配人のダンカン・エルフィックが立つ。「急用が出来たので、ホテルはカバーできない」 と言ったにもかかわらず、ちゃっかりウィスキーフェスティバルに参加しているので、 ちょっとバツが悪い。ダンカンがこっちを指さして笑っている・・・。「とりあえず周りを見てくるは」と、逃げるように奥のテントへ。会場は二つのテントに別れ、入ってすぐのテントにはイベントブースと、クライゲラキホテルのようなプレマイズブースが。奥のテントにはオフィシャル・インディペンデント両方のウィスキー関連会社がブースを構える。入るといきなりRMWが。普通のブースではボトルの販売が許されていないらしく、試飲をしたボトルはRMWで出がけに買うというスタイルらしく、 なかなかおいしい商売である。働いている身ながら、「ははぁ〜ん」とうなずいてしまった。ここでも、忙しく働く同僚を尻目に、早々と他のブースへと身を隠す。

多くのボトルはウィスキーフリンジで振る舞われたものと同じだったが、それでも見 たこともないモノも数多くあった。先ずはグレンゴインの10年。カスクストレングスで、このフェスティバルがLaunching Party(発売記念)だという。早速グラスに注いでもらう。First-fillなのか、やたらに樽の主張が強い。水をちょっと足せばあっ という間に真っ白になるほど白濁する。バター臭やえぐみが強くて、途中で断念。ちょっと残念だった。

二番手はラフロイグ。どうも若草色した見たこともないボトルがAllied Domecqのブースにあるので、近寄れば、ラフロイグの「新種」だとか。名前をクォーターカスクと言って、その名の通り、クォーターカスク(パンチョンの1/4、この場合は105リットルぐらいだそうである)で7ヶ月程度フィニッシュをかけたものだそうだ。クォーター自体はバーボン樽ということなので、ノーズ、テイスト共々、バーボンらしい風味が高まっている。特筆すべきはその柔らかさ。ピーティーな感じが全面に出ることなく、クリー ミーさと手を取りつつ、良いバランスを保っている。昨今、ウィスキー業界はどうも女性陣の取り込みを画策している風が見て取れるが、これはスモーキー・ピーティー さを売り出す「アイラ物」の一つの回答なのだろうか?ちなみにこのボトル、パッケー ジングも含めて、未だプロトタイプだそうで、販売は来年の春になるとのこと。

まだまだ話は続くが、続きは次号ということで・・・今回はこの辺にしましょうか?
 
 

ベルギーチョコレート
Edinburgh Now: 050
2004.09.10
 

 
  クライゲラキホテルの皆川氏から、またまた要請を受けてQuaich Barをカバーするこ とに。去年の10月、ホテルに行ったときは、唯一無二のチャンス!とばかりだったが、5月に引き続き、9月、また来月も…となると、 だいぶ仕事も落ち着いて出来るようになってくる。最終日が近づいても、「まぁ、次 回もあるし、そんなにハッスルすることないない」となるわけである。

今回も5月同様、約一週間と、短い期間だったが、その間、ヘッドシェフから面白い 話を聞いた。
オランダ人の彼は、もともとはお菓子作りが専門なんだそうだが、その彼が興奮しな がら話をしたのは、なんとベルギーチョコレート。なんでもインヴァネスのある小さ な商店街に数年前からベルギー人がチョコレートショップを出しているとの話。驚く べきは、ウィスキーが入ったベルギーチョコレートを10種類以上売っているとかで、 その殆どがシングルモルトだとのこと。ウィスキーはアルコール度数が高くて、ベル ギーチョコレートのように繊細なチョコレートに旨く封じ込めるのは至難の業だとか で、「もうさ、神がかってんだよ!!」とエキサイトしていた。前にお伝えしたエジ ンバラのチョコレートショップ(No:024)はラフロイグ一種類で、しかも「ほのかに」 感じる程度だった。こちらはどんな感じなのだろうか?ちょうど、一週間の仕事も終わりに近かったと言うこともあって、行き方を聞き、エジンバラに戻る際に訪れてみ ることにした。
 
 

 
  インヴァネス。何度か車で通ったことはあったものの、市内に入ったことはなく、駅を下りてみてびっくり。 晴天も手伝って、本当に美しい街だということに初めて気が付いた。駅前できょろきょ ろしていると、目の前に小さなアーケード街が。「Victoria Market」。中に入ると、 期待していたようなパリの小綺麗なアーケードなどとは違い、何だか妙なお店が雑多 にある。観光客向けでないのは一目瞭然である。その奥に、目当てのチョコレートショ ップはありました。シェフが表現したように、確かに日曜大工で作ったような、いか にも素人作りの簡素なお店。が、ショーケースにはモルトの名前が書いてあるチョコ レートがずらずら。アバラワー、バルヴェニー、ボウモア、Gグラント…
Belgian-Caledonian Story
 
     
 
 シングルモルト・チョコレート  シングルモルト・チョコレート
 
       
 
店の奥からひげを蓄えたでっかいおっさんが出てきて、これをどうぞとボウモアを。 おそるおそる口に含めば、今までに経験したこともないセンセーションが! ともかく、モルト。この一言に尽きる。不思議なことに酒そのものを口に含むよりもずっとテイ ストがわかる。次にバルヴェニー。これはまさにバルヴェニーそのものである。チョコレー トの中はクリーム状にしたペーストで、どうやらそれにウィスキーがしみこませてあるようだが、ともかく凄い。早速自己紹介をして、話を聞けば、お店は目の前にいる彼と、奥さん、それと息子さんの三人で経営をしていて、ウィスキーを除く全てはベ ルギーから輸入し、自らで作っているのだとか。
店の主人、ルーカスさん
   
 
もともと英国は本物のチョコレートというのが無くて、チョコレート純粋主義論争なんていうのが他のEU各国との間で繰 り広げられたこともあったが、最近ようやく一般家庭にも質の高いチョコレートが広 まってきた。そういう流れの中で、店の主人、ルーカスさんもインヴァネスにやってきたそうだが、彼自身はスコットランドが好きで、お店も、「Belgian-Caledonian Story」("Storyは彼の姓とのこと)と名付けたそうだ。日本にも一度輸出しようと考えたことがあったそうだが、なんでも高い保険料がハードルだったそうで、断念したそ うである。だれか、日本に輸入されませんか?まぁ、当分は、インヴァネスまで足を伸ばす以外他はないようだが…。
 
     
  彼の作るシングルモルトのチョコレートの種類は以下の通り。グレンフィディック、 グレンリヴェット、トマティン、ダルウィニー、アバラワー、マッカラン、グレングラ ント、ラフロイグ、グレンモレンジ、グレンモレイ、ボウモア、バルヴェニー、オール ドプルトニー、グレンアラキー等々。これでブラインドテイスティングをやるのは絶 対に面白い!ただし、二回目以降はチョコの形状で判断できるようになるので、本当 の「ブラインド」で試されることをお勧めする。
whisky assorthent
 
 

ビアフェス・・・
Edinburgh Now: 049
2004.08.31
 

 
 
エジンバラフェスティバルも終わり、秋がやってきた。ここ数日、冷え込むようにたっ てきたし、空も秋空。虫の音こそしないが、観光客も去り、だいぶ寂しくなる季節だ。
今年のフェスティバルは異常気象に悩まされて、雨ばかりが多かったが、そんな天候には全く左右されないフェスティバルイベントもある。ビアフェスティバルである。

だいぶ前の話しになるが、6月17日〜19日の3日間、リアルエールの消費者団体、CAMRA(Campaign for Real Ale)が主催したビアフェスティバルでは、スコットランドに存在するほとんどビールが樽出しの状態で飲めるという事で、大盛況だった。
 
       
  エールは通常、パブで二日間ほど「コンディショニング」という最終的な調整を行い、その上で振る舞われる。ということで、この3日間で出されるエール全ては一樽ずつ(その樽が終わっても、次の樽が出せる状態になるまで非常に長い時間が必要となるため)。つまり、早い者勝ち。確かに3日目に行ったときには殆ど何も残っていなかっ た。  
 
圧巻なのは、その振る舞い方。二段のラックに、樽が少し傾いた形で置かれ、それに蛇口が直付けされている。飲みたい銘柄を頼めば、そのままジョロジョロとグラ スについでくれるという仕組みである。

こうやってジョロジョロと…

近くに行くとこうなっているのです
(友人宅でパーティーの際に撮影)
 
     
 

本邦初公開、Finllaganのポンプクリップ
120種以上ものエールがあって、とてもどれもこれも飲めるという量ではなかったが、その中でも面白かったモノを3つ。先ず二つは、今年4月にオープンしたばかりのアイラ初の醸造所、Islay Alesからのエール、Finlaggan AleとBlack Rock。FInlagganは軽めで、フルーティー。甘みも抑えめで、かなりすっきりと飲めるエール。Black Rockは、もう少しボディーがあるが、柔らかい感じを受ける。ロースとされたモルトを使用しているために、色は濃いめで、ナッツのような香りもあるが、それでも他のダークエールと比べると甘さは控えめでとても飲みやすいエールだった。ダークエー ルは悪くはないのだが、傾向として甘めなモノが多くて、最初の一杯で敬遠してしまうのだが、これは何杯でもいけそうだった。
 
     
 
Islayだけにピーティーではないの?という質問はごもっとも。しかし、ピーティー なエールはむしろインヴァネス近くで作られていた…エールの名前はその名もScotch。
Black Isle醸造所が作るこのエールはピーテッドモルトと、テンニンカというハーブ でアクセントされたエール。口に含むと、ラガヴリンの様な土っぽいピートさがある! たまたま知り合いにBlack Isle醸造所で働いていた人間がいたので後々に聞いてみれば、当初、実験的に通常のモルト100kgに、1kg程度のピーテッドモルトを仕込んでいたそうだ。が、ワートが完成した段階で釜を開けところ、オフィスがある隣の屋から、何事が起きたかと人が飛んできたほど臭いが強烈だったそうである。結果的には、製品化されたものには大体100g程度しか入っていないそうだが、これでも十分ピートっぽさは楽しめる。瓶詰めの状態のモノも売られているので、こちらに来られるチャンスがある方はためしてみたらどうだろうか?
 
     
 
エジンバラフェスティバル期間中は、そこかしこのパブが独自のビアフェスティバルを行う。要は、いつもは余り扱わないような珍しいエールをゲストエールとしてある 一定期間とっかえひっかえ出しましょうという企画である。今年は、とあるエジンバラフェスティバルの特別会場で、去年からずっと待ち続けていた「幻」の樽出しエー ルに出くわしたので、それを最後に紹介したい。その名はInnis & Gunn。この名前に ピピッと来た方はエライ。実はこのエール、去年のこのコーナーで一回紹介している、 アメリカンオーク樽、77日間熟成のエールなのである。このエールを熟成後、この樽はGrantsのAle Cask Finish用に使用されている。ボトル物としては去年から売られてはいたが、樽出し状態では売られたことがなかった。

これも本邦初公開、Innis & Gunnの
ビアタブ
 
  なぜか、Ice cold, Blondeと書かれていて、通常のボトルコンディションの物とはラベルも違うが、中身は確かにInnis & Gunn。やたらにバニラ臭がして、酸味がある。 決して飲みやすいと言うわけではないが、日本のように暑いところで飲むにはなかなかだろう。ちょっと味が薄い気がしたのは残念だった…なんでも9月には、1年熟成の限定ボトルコンディション版がでるとかで、こちらもなかなか楽しみである。  
 

ウィスキーショップ夏の陣其の二
Edinburgh Now: 048
2004.08.11
 

 
  今年もエジンバラフェスティバルが始まった。今年は何の理由か良くは分からないが、開始日が遅く8月第二週から。アテネ五輪がどう影響するか、関係者の間では様々な憶測が流れているが、それにもまして影響が大きそうなのが天気。どうもこのごろ天気が良くない。スコットランドの天気が良くないというのは、定番だが、ここまで 悪い天気は珍しい。今日も含めて四日間は濃霧。内、3日はざぁざぁ振りの雨。これでは大道芸人もさすがにパフォーマンスのしようがない。
Edinburgh Fringe
 
 
エジンバラフェスティバルの開始を告げる大パレード
 
     
  それに比べ、7月、特に後半は天気が良かった。冷夏とはいえ、一時の夏を充分味あわせてくれた。そんな青空の広がるなかでオープンしたのが、The Whisky Shopのエ ジンバラにおける第三号店。皮肉なことに、前号でお伝えしたチーズショップを間に挟んでDemijohnの右隣。

もともとVictoria St.は可愛いお店やオシャレな雰囲気のショップが多いのだが (Demijohnはその中でも突出していると思う)、それに新たに彩りを添える形となっ た。店の中はエジンバラの他の支店に比べ、明るく、開放的。 ショーケースの中にはなかなか貴重なモルトも多い。

この日はマネージャーである、ダランも駆けつけ、小さなオープニングセレモニーが。 これで200以上のモルトを集めるパブ、Bow Bar、Demijohnと続いて、ウィスキー 関連のお店がまた一つVictoria St.に増えることになった。

Victoria St.から、Royal Mile Whiskiesまで徒歩で二分。Whisky Heritage Centreへも三分。Cadenhead's直営店ですら十分。気温の上がらない夏のエジンバラだが、 ウィスキーショップの戦いはますますにヒートアップしそうだ。
Victoria St
二つの店はこんなに近い!

The Whisky Shop
マネージャのダランも他店から駆けつけて…

The Whisky Shop
窓が大きいせいか、店内は開放的
 
     
 

ウィスキーショップ夏の陣其の一
Edinburgh Now: 047
2004.07.31
 

 
  エジンバラの中で最もカラフルで、最も歩いていて楽しいこの通りといえばやはり、エジンバラ城からほど近いVictoria St.だろう。様々なゲストエールが並べられ、 「真の」トラディショナルパブであるBow Barや、人間の頭よりも巨大なチーズが所狭しと並べられているチーズショップ(湿っぽい独特の臭いが漂っているので、チー ズが苦手な人はここの前を通るだけで、顔をしかめている)、やたらにオシャレな 「金物屋」などなど、色とりどりの建物だけでなく、そこに入るお店の幅の広さもなかなか面白い。

そこに、この一ヶ月でなんと二件もウィスキーを売る店がオープンした。しかもこの二件、チーズ屋を挟んで両側に店を構えている。今日は、そのうち、先にオープンした店についてお伝えしたい。題して、「ウィスキーショップ夏の陣其の一」である。

この連載でも何回かお伝えしているように、同じ欧州でも、大陸と英国ではその文化の違いはなかなか大きい。歴史的成り立ちも違えば、人種も違うし、言葉も違う。 「島国根性」と言われるように、新しいシステムを導入するにあたって、何かに付け難癖は付けるし、自分の文化をやたらに喧伝したりもする。

が、その裏側で、大陸、特に地中海に対する憧れは日本人と同じくらい強くて、なかなか「可愛い」ところがあるんだなぁ、と妙に納得させられる側面も多い。聞けば、二十年ほど前は、スーパーマーケットで買える緑の野菜と言えば、キャベツかブロッコリーぐらいだったそうだが、今では様々な食材が並ぶようになった。自分が英国に住んでからのこの7年だって、食事に関する意識は目に見えて上がったし、何より若 い人が料理をするようになった(「裸のシェフ」なんて、十数年前はおそらく考えら れなかったに違いないだろうと思う)。
 
     
 

当然の事ながら、そういう流れを受けて、健康食品やら、大陸系の食材店なども増えてきたが、遂に酒に関しても大陸的な店構えを持つショップがエジンバラにも現れた。 名前は「Demijohn」(デミジョン)。フラスコのお化けのようなガラス瓶の事を指す言葉を店の名前に冠しているわけだ。昔々、まだ個人用の瓶が高価だった頃は、ワイ ン等、様々な飲用の液体はこの球体に入れられ、人々は空き瓶を片手に量り売ってもらっていたそうだが、そんな頃のある種ノスタルジックなイメージと、大陸風のオシャ レなイメージ(デミジョン等を置いて量り売りをするスタイルは大陸で比較的多い) が旨く融合した、そんな店である。

オーナーのアンガス・ファーガソン氏は元々、スコットランドで陸軍に所属していた が、遠征で世界の様々な所を訪れるに従って、いつかエジンバラでも大陸でよく見ら れるような、こんな量り売りの店を出してみたいと言う気持ちを強くしていったのだ という。

明るく開放的な店の中には、さまざまな色をしたデミジョンが置かれ、さながら中世の錬金術師の店のよう。とはいえ、店内の色遣いはスコットランドとは思えないほどの明るい色遣いで、それを背景に並ぶ色とりどりの球形の巨大なグラスは見ているだけで楽しい。中には泡が沸々と立つ赤い液体(ラズベリービネガー)や、緑色のいかにも粘性の高そうな液体(オリーブ油)、無色の液体(なんと例のBlackwoodのジンとウォッカ!)などなど。その下には様々形をした空瓶が置かれ、「これでスマート にお土産を買っていったら、喜ばれんだろうなぁ…」なんて、ちょっと下心が出てしまいそうなほどである。


右のI.J. Mellisがチーズショップ。
その更に奥には…


実際にサンプルを採ってみせる
アンガス氏…
 

こんな可愛いボトルでお土産もらったらどう思います??
     
 

そればかりか、それら全ての商品は実際にサンプルとして口にすることが出来る。 「デミジョンで売ることの最大の利点はおそらくここかな?」そう話す彼の後ろには 三つの樽が…よくよく見れば、一つはOld Pultney 14y 59.4%、もう一つはCaol Ila 14y 40%、最後がBenromach 5y 40%である。その内のPultneyを試させてもらった。1 4年という事だが、かなりシェリーの影響が強く出ているようで、海岸っぽさと、それなりの硫黄臭、深みのあるシェリー香が絡み合って相当ヘビーな印象を受けた。 他にも、ミード(蜂蜜醸造酒)や、ウィスキーリキュール、ラズベリーウォッカなど 7月1日にオープンしたばかりだというのに、既に16種類もの酒が並んでいる。

しかも、それ以外のオリーブ油等も相当なもの。「村」単位で作られたイタリア産超高品質オイルをいくつか試させてもらったが、どれもその場でオリーブを口に含んだかのような(実際にオリーブの実を生で口に入れればとんでもなく渋いのだが…)深 い深い、芳醇な香りがする。良く、地中海にはそこに行かなければ決して手に入れる ことも、知ることもできないワイン、ヴィネガー、オリーブ油があると言うが、アンガス氏はその豊富な軍隊遠征の経験を経て様々な人脈を得たようである。


これがその樽。 さすがにこれでは
熟成はしないと思うが…
 
 
住所は
32 Victoria St, Edinburgh, EH1 2GW
ホームページは
http://www.demijohn.co.uk
   
 

クライゲラキリターンズ5
Edinburgh Now: 046
2004.07.28
 

 
  前回のクライゲラキーリターンズの最後で触れたように、今回のクライゲラキーホテルのハイライトは、まさに"Idiosyncratic!"(特異!)の一言に尽きるものだった。  
     
 

Laphroaigコレクターのオランダ人夫妻、南ドイツでウィスキーショップを営むカッ プルがQuaich Barで語らっているその夜、ホテルの「読書室」にはエジンバラ郊外からやってきたという老夫婦が2カップルが楽しそうに談笑していた。彼らも既に何泊かしており、気軽に話が出来るようになっていたが、その内の一人の男性が「Jimmy、 御前さんは随分ウィスキーに興味があるみたいだが、歴史に関してはどうだ?」と聞 いてきた。
元々個人的にはウィスキーそのものの歴史よりも、それにまつわる歴史(例えば、現在のウィスキーに対するイメージや「神話」などはどう作られていったか)等に興味があったので、その旨を伝えると、彼はすくっと立ち上がり、「ちょっとまってろ、 今面白いものを持ってきてやる」と、いって部屋を出て行った。残る三人は交互に顔 を見合わせて愉快そうな笑みを浮かべる。

 
     
 

しばらくすると、でっかい紙袋を三つも四つも抱えて彼が現れた。中から出てくるのは巨大なアルバム。最近はデジカメばかりで、アルバムを見ることそのものが新鮮だ。 一体何が中に挟んであるんだろう?彼はおもむろにその内の一冊を取り出し、中を開 いて見せてくれた。中からは…次から次へと、色とりどりのポストカードが見える。 そのどれもがウィスキーがらみのもの。聞けば、1800年代からのウィスキーの宣伝用 に作られたポストカードで、Haigやら、Johnny Walkerやら、Black & Whiteやら、はたまた見たことも聞いたこともないウィスキーまで、様々なカードばかりが出てくる。 Johnny Walkerなどは、かの有名なStriding Manが考案される前のものもあり、そこ からは今とは似てもにつかない、控えめな「おしとやかな」当時のJohnny Walkerの 宣伝形態が見えてくる。中には実際に投函されたももあり、それらは消印が押されているので、実際何時の年代かが正確に分かる。

さらにページをめくっていくと、今度は白黒の写真が…よく見ると、1900年代前期から中期の様々な蒸留所の写真などがポストカードになっている。C.マクリーンが 「トルコ宮殿」と表したImperialは、まさに宮殿そのものだし、Doigの最初の手になるパゴダを冠したDailuaineの空中写真、火事で焼失したアバディーンの蒸留所の写真(なんと、消失している最中と、その後のがれきの写真がポストカードになってい る!)、名前には聞いていたものの、見たこともないStronachie蒸留所の空中写真など、Blended Whiskyのポストカード以上に興味深い写真が山のように収集されている のだ。終いには、ロンドンの伝説のパブ、Dirty Dicksの写真まで(今も存在するには存在するが…)。

それを見ていた彼は、今度は車に戻ってトランクからまた別のアルバムを…今度はなんと樽の売買証明書などのいわゆるinvoiveやbondが出てくる。取引日などをみると、 驚くなかれ、早い物に至っては1700年代後半の日付が記された物までがある。「つい このあいだ」200周年を迎えたObanなどは、その1870年代の手紙に既にOban独自の字体や、ロゴが刷り込まれ、まさに感動もの。

偽ボトルなどを鑑定するときに、ラベルに刷られたProprietor(所有者)の名や、ロゴ、フォントなどが重要な手がかりになるが、まさにこれらの資料はそれら鑑定を裏 付ける重要な「証拠」になるかもしれない。聞けば、公にはこれらのコレクションの存在を知っている人は居らず、ここで書くのがおそらく初めての公開になるとのこと。 この場を借りて、記事を書くことに快諾して下さった彼に感謝を表明したい。


よく分からないウィスキーと共に、
Glen Cadamの文字が見える…


火災で焼失中の蒸留所とその後…
赤い色が付いているのが分かる…


上ぺージ、上右端にはインペリアル蒸留所、下ページの右上端にはダルユーン蒸留所が分かるだろうか?


右の手紙はオーバンのもの。
1875と言う文字が見える。
 
 

Out of Control
Edinburgh Now: 045
2004.07.09
 

 
 

先日、日本の新聞でも報じられていたが、英国でもいよいよパブでの禁煙が法制化されるかもしれない。労働党党首のブレア首相も次期選挙の労働党マニフェストにパブの禁煙化を盛り込むことに意欲的らしい。これは去年のニューヨーク市と今年のアイルランド共和国での酒場での禁煙化の成功を受けてのもの(施行前の予想を裏切 り、両地域では禁煙化がさほどの抵抗もなく進んでいるとのこと)。

が、面白いことに、たとえ英国議会でこれが法制化されてもこのことが直接スコット ランドにも当てはまるわけではない。スコットランドは独立した立法と行政機関があり、外交・軍事を除く様々な事柄を独自で決めることが出来るからである。そういう意味で英国議会は大英帝国の議会であると同時に、「イングランドの議会」でもあるのである。

とはいえ、パブ・レストランでの禁煙化の動きはスコットランドでも着々と進んでい る。禁煙化に懐疑的であったスコットランドのマコーネル首相も、最近では「説得の余地有り」と態度を軟化させており、イングランドよりも速いペース−事によってはここ数年で−全面禁煙化が行われそうな気配もある。パブ5100店、レストラン2400店を有するスコットランドから紫煙が消えるのはいつか?

むしろ問題なのは酒そのもの。随分と長いこと英国では"European-Style"(この場合、 「大陸的な」という意味−特に南欧によく見られるような非常に緩い酒販時間制限での営業スタイルを指す)の酒場の営業時間が論じられてきた。これは酒場での酒販の時間制限を今よりも緩くし(現在、スコットランドでは通常パブは11時、クラブ等では1時ないしは3時まで)、客に店終了間際の一気のみをやめさせようというものだが、最近は猛烈な反発にあっている。

というのも、欧州全体でのアルコールの消費量が下がっている中で、スコットランドではアルコールにまつわる問題が「Out of control」になっているからだ。特 にBinge Drinking(一気飲みや、がぶ飲み等)は「疫病」とまで言われるほどに深刻で、最近の統計ではアルコールが原因で病院に担ぎ込まれる数が、ここ五年足らずで二割も増加するという大変な様相を呈しているからである。中でも深刻な疾病はそれ以上の増加を見せ、例えば肝疾患などは同時期で四割も増加しており、その状態は加速度的だそうである。アルコールが原因での死者は1980年には600人弱だったが、2002年はその三倍以上、約2000人に上っている。この国での蒸留酒を除いた飲酒の合法年齢は16歳(親同伴で食事中の飲酒が原則、購入等は18歳以上)だが、15歳未満でも四割は週に一度以上の飲酒をしているとの統計もある。

要するに、深夜営業を許して、それにまつわるBinge Drinking(当然それ以外の理由で一気のみをすることも多い)を取り除けたとしても、この国に深く根ざした飲酒に関する問題そのものは到底取り除けないのではないか?という不安を如実に表した結果なのである。

興味深いのは、これを地理的に分析すると「西高東低」がくっきりと表れる点だ。例えばグラスゴーにおけるアルコールがらみの治療件数は全体平均よりも四割も高い。 他にもハイランドや、スカイ島、アイラ島などを含む西方諸島、アラン島等も平均以上である。逆にエジンバラや、ダンディー、アバディーンなどは平均以下と、理由は様々だが、地域的な差が顕著に表れている。

これらアルコールに関する疾病に対しての医療はタダでさえ破綻状態にあるこの国の健康保険制度にも重大な影を落としており、決して看過できるものではない。この分野で大きな影響力を持つ研究者などは、最も効果的且つ実行可能な方法として酒代を上げることを提唱している。同様な方法を用いて、英国は喫煙率の低下に成功してお り(この国ではタバコ一箱、なんと約千円。しかし、喫煙率は三割まで低下している) 、同様の手法がアルコールに関しても有効であるとしている。

"European-Style"が指すものが、逆に北欧のスタイルを意味する日がもしかしたら来るのかもしれない(例えばスウエーデンのアルコール飲料の販売は国営企業Systembolaget社による専売制で統制されている)。

 
 

クライゲラキリターンズ4
Edinburgh Now: 044
2004.07.06
 

 
 

クライゲラキーにやってきてつくづく思うことがある。純粋な観光都市、エジンバラで働いていると、大体のお客さんは(当然だが…)観光客で、そのほとんどはあまりウィスキーを知らない。良くあるのは「○×というウィスキーを二十数年前に飲んだが、あれは最高だった。以来ずっと探しているんだが、知っているか?」とか、「うちの親父は○×ウィスキーがとても好きなんだが、似たようなものはあるか?」または、「ウィスキーは『ナニガシ』が良いと友人が言っていたが、それは手にはいるか?―というものだったりする。中には「このウィスキーはいつが飲み頃か?」なんて言うのもあった。興味深いのは、シングルモルトの「シングル」から、「ダブルモルト」はあるのか?と時々訊かれる。実はなかなか重要なポイントで、よく考えると、「シングル」は別に「モルト」そのものを形容しているわけではない―「シングル」が「モルト」を形容していると考えれば「ダブルモルト」は自然な造語なのだ(そういう意味では、日本の「単一蒸留所」という言い回しの方がシングルモルトよりもむしろ正しいかも)。

当然、こういうことはこういうことで楽しいし、なかなか勉強にもなる。サンプルの ウィスキーなどを出して『あぁ、ウィスキーってのはこういうものをいうのか。』と 思われれば、こちらも嬉しいことにかわりはない。ただ、クライゲラキーに3日もいればすぐに気が付くことだが、ウィスキーを提供する側として「やりがいがある(英 語ではChallengingということが多い)」という状況は、やはりホテルの方が圧倒的 に多いのだ。以前のリターンズで紹介したドイツ人にしてもしかり、他の客にしても しかりである。

そんなことをボーっと思っていたら、またまた面白いゲストがホテルにやってきた。
オランダ人のボトルコレクターで、特にラフロイグに力を注いでいるとか。バーにやっ てきて、今日買ってきたばかりという、SignatoryのVintage Laphroaig,1967-1996の28年を目の前で開栓。「グラスを一個寄こせ」と言うなり、ドボドボと注いで、「これを試してみろ」。素晴らしいフルーティーさに先ずびっくり。どことなく、 Duncan&Taylorの初回のBowmoreを思わせる。ピーティーさよりも、先ずこのオリエン タルなフルーティーさが立つのは面白い。

 
     
 

彼はホテルにボトルキープがあるが、更に驚いたのは彼が彼の友人のボトルまでオフ ァーしてくれたこと。実は前から少し気になっていたのだが、この友人のボトルはシミだらけのオールドボトルで、後で調べてみたが、1945年蒸留の、イタリアマーケッ ト向けとしてGMで詰められた33年物のMacallan。確か2000年ぐらいにどこかのオー クションで…。これも少々頂いてみた。ちょうど例の一件の後だけに旧ボトルのMacallanは少し眉に唾を付けて試してみたが(それ以前に舌に唾が…)、昔のMacallanらしく、どちらかと言えばピーティーで、深みのあるシェリー香が心地よかった。余韻も長く、多少ビターな印象が残るものの、時間をかけて楽しめる。

前回はSpringbank-1919(Tallボトルの方、こちらでは大体200万ぐらいで売られているモノ)を試飲させてくれる人までいたが、Laphroaig、Macallan共々相当なも のだった。

Macallan 33Years Old
 
 
Macallan 33Years Old
 
 

Challengingと言っておいて、単に珍しいモノが飲めるだけじゃないか…と思われた方、あなたは正しい!が、そのように「超」の付くレアモルトを差し出されて、その後「今度はこちらを驚かせてくれ」と言われたらドウしますか?一応今回はそれなりに驚かせることが出来ましたが…。

彼はその後五日ほどホテルに滞在し、親交を深めたが、実はその裏で、まさに「裏」 でとんでもないゲストが同時に滞在していたのである。彼の驚愕のコレクション…そ れについてはまた次回に…

 
 

リースフェスティバル
Edinburgh Now: 043
2004.06.23
 

 
 

エジンバラは7〜8月のEdinburgh Festivalが世界的に有名で、そのおかげでエジンバラ周辺にはやたらにFestivalと名の付くイベントが多い。次号辺りでお伝えできるかもしれないが、Beer Festivalは大小合わせてかなりの量に上るし、国際書籍祭やら、Science Festivalなんて言うのもある。ということで、その流れに乗ってLeithでもここ数年、Leith Festivalというものが催されている。今回は、(自分にとっての)目玉である、あるイベントに参加してきた。

そのイベントとは…Whyte & Mackayの名マスターブレンダーであるR. パターソン氏主催のDalmore & Juraイベント。要はただ酒が飲めると言うだけのモノ(!)であるが、久々にパターソン氏に挨拶を…と妙な下心も持ち合わせての参加。氏には以前数回会っており、特に彼のオフィスを訪れたときは例のDalmore62年(McTear'sオークションで500万円以上の落札価格をたたき出し、世界最高額のウィスキーに一躍躍り出た代物)を飲ませて頂いたのはもう2年前。が、それよりも凄いと思ったのは彼の記憶力。彼の歴史上の出来事を事細かに覚え、それを駆使したプレゼンテーションは誰もが楽しめるモノだが、それ以上に彼は彼が会ってきた人物を非常に良く覚えており、もしかしたら自分のことも覚えているのではないか、密かに期待していたのである。

本当に嬉しいことに、期待は的中。本当に親切な彼は、人混みから自分を見つけてわざわざ話しかけに来てくれた。近況を報告し、しばしビジネストーク。彼の紳士的な、けれどとても暖かみのある話には本当に頭を下げたくなる。

 
     
  肝心のイベントの方だが、彼は一流のエンターテイナーでもあり、話しも本当に面白い。今回のイベントでも、彼の得意技を披露。「テイスティングをするときに一番重要なのは…」といって、おもむろにテイスティンググラスにウィスキーを注ぎ、それをいきなりカーペットにバシャッ!!周りの反応が面白い。きちんとしたテイスティング会ではなく、無料の、本当にラフなイベントで皆盛り上がる。彼の話の後、メイン会場のホテルを起点に、Leithのいくつかのパブを巡りつつ、DalmoreとJuraのウィスキーを楽しむ。いわばオリエンテーリングのようなイベントだ。
R. パターソン氏
R. パターソン氏主催のDalmore & Juraイベント
 
     
 

イベントも楽しく終わり、近いうちにまた彼のオフィスを訪れることで約束を取り付ける。その後、そのイベントに同じく参加したThe Whisky Shopのダランとその同僚アラン、ロイヤルマイルにあるウィスキーヘリテージセンターで働く女の子ミッシェルとビールをすすりながら他のイベントを鑑賞。何でもミッシェルはエジンバラにあるHeriot-Watt大学で醸造学を学んだそうで(ここの醸造学は世界的に有名)、以前はDiageoのモルトハウスで働いていたんだとか。興味深い話をいくつか聞いて、彼女ともまた再会を約束して家路についた。

 
 

クライゲラキーリターンズ3
Edinburgh Now: 042
2004.06.22
 

 
 

クライゲラキーはエジンバラとは違って、風が少なく、晴天率も高く、この時期は本当に過ごしやすい。ということで、今回も自転車を借りて昼間は辺りを散策。今回はSpeysideの支線である、Craigellachie-Dufftown線を使ってDufftownへ。しかし、この小道、2002年晩秋に雨のために地滑りが発生して一部が相当危険になっている。
途中Fiddich川を眼下に見やりながら冷や冷やしながら自転車を押して歩くことも幾度か。

 
     
  約25分ほど走れば今は無きConvalmore蒸留所の脇に出る。すぐ奥にはBalvenie。この 辺からレールが現れ、置き去りにされたボロボロの気動車が見えればウォーキングコースとしてのSpeysideは終了。町の中心部を避けるようにGlen Fiddich蒸留所で左に曲がり、Balvenie Castleの脇を抜ければ左手にParkmore蒸留所が見える。1931年代に閉じられたとは思えないほどの良い保存状態。右奥にはGlen Dullan蒸留所。それらをちょうど分けるようにDufftown-Keith路線が走る。この路線は通勤路線として1990年代前半まで活躍していたのでレールが未だ残っている。レールの上をゆっくりと歩きながら両蒸留所を見れば、ウィスキーが鉄道で運ばれていた在りし日に誰しも思いを馳せるというもの。  
     
 
…ん?妙にレールがピカピカしてやいないか?よく見ればバラストの石も新しい。これは…と思っている内に、Glen Fiddich蒸留所の方角から警笛が。しばらくしてレールの上を列車がやってくる独特の金属音が。よく見ればゆっくりと気動車がやってくるではないですか!呆然と線路から列車を見上げていると、列車は目の前でゆっくりと止まり、中から運転手のおじさんがにこやかに「やぁ!」。聞けばこの季節は、保存鉄道として週末に走っているのだとか。これはと思って、明くる日、実際に乗車してみました。

BalvenieとGlen Fiddichの間、置き去りの気動車の横に小さな駅舎がある。そこからこの保存鉄道「Spirit of Speyside」はDufftownを目指して週末に三往復をしている。所要時間は約一時間。Glen Fiddichの裏手を抜け、Parkmoreを眼下に見ながら、新緑のSpeysideをゆっくりと走るこの鉄道は、「鉄ちゃん」でなくてもウィスキー好きならば一度は試してみたいもの。Dufftown駅には昔の客車を使ったカフェがあり、そこでケーキや珈琲、紅茶なんかを買ってそのまま列車に乗れる。カップや皿は全てふつーの陶器製。Keith駅でそのまま列車に置いていってくれればいいという、この国ならではのおおらかなサービス。Keith駅手前ではStrathmill蒸留所を通り越す(註:終点Keithは、性格には「Keith Town駅」といって現在、Inverness-Aberdeen路線のKeith駅ではなく、同町内の違った駅)。

英国ではこのように廃線になった路線に愛好家達が保存鉄道を走らせることが少なくないが、運転手さんも車掌さんも皆、週末だけのボランティアなので皆本当に楽しそう。仕事があるので残念ながらKeith駅ではホームに降りたっただけで、そのまま同じ列車で引き返すことになったが、車掌さんが深刻な顔して「またこいよ!Keithは良いとこだぞ!」と言ってくれたのには感動しました。

Spirit of Speyside
Spirit of Speyside

Spirit of Speyside
Spirit of Speyside

Parkmore
Parkmore
 
 

来年のG8サミット、Scotlandの名門ホテル、
Gleneaglesにて開催
Edinburgh Now: 041
2004.06.11
 

 
 
クライゲラキーリターンズはまだ続くが、ここでちょっとしたニュースを。
ここ数年、「先進国」の年次総会から、様々な市民団体のデモの祭典と化し、開催場所の選定が難しくなっていたG8サミットだが、来年の開催場所がScotlandの名門ホテル、Gleneaglesになることが決定した。

GleneaglesはEdinburghとGlasgowのちょうど中間辺りを北上した、Perth近くにあり、地理的に言えばウィスキーの聖地というほどではない。しかし、このホテルは現在Diageoが所有していることもあって、ウィスキーとの関連はなかなか深い。バーは他のホテルと比べてシングルモルトはかなり充実しているし、何と言ってもホテルの高級スイートはDalwhinnie, Talisker, Cragganmore,Oban等々、皆ウィスキーの名が付けられている(そのスイートクラス自体がなんといっても"The Whisky Suite"というぐらいだ)。そして最高級スイートの名は…皆さん想像できますか?そう、やっぱり「王」の名を冠した、The Royal Lochnagar Suite。普通に泊まれば一泊30万円以上というこのルーム、来年のサミットでは一体どの国の首脳が泊まるんだろうか?

Gleneaglesは、Scotlandの雑誌であるScottish Field誌の定期企画「The Whisky Challenge」にも出ている。この企画、RMW, The Whisky Shop, CraigellachieHotel, Gordon & MacPhail等の、Scotlandを代表するWhisky Merchantsが毎号で与えられたサンプルウィスキーをBlind Tastingにて評価し、それが誌面にブランド名付きで紹介されるというモノ。ブランドイメージにとらわれない評価が出来ると評判だ。そこにこのホテルも参加しているわけだからモルトに対する力の入れようがわかるというもの。

来年のサミットでは各国首脳達が晩餐の後、ウィスキーを片手に語らいを進めることになるのだろうか?