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Scotch Whisky Research Centre
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  2007.06.10/No.17 キルベガンで蒸留開始 !!
2007.03.10/No.16 パンチ・ドリンカー!?
2006.12.10/No.15 さらばコロンブス!!
2006.09.10/No.14
 偉大なるパフォーマー
2006.06.10/No.13
 オーガニックなベンローマック!?
2006.03.10/No.12 物議を醸すインナーステーブ製法
2005.12.20/No.11 完璧なるピートのガイドブック!?     
2005.09.16/No.10
 新雑誌創刊ラッシュ
2005.06.16/No.9
 奇妙キテレツな蒸留器!?

2005.03.16/No.8 ついに真打登場 ! !
2004.12.15/No.7 今年最大の買収劇
2004.06.24/No.6 湖水地方にも新しい蒸留所が・・・
2004.06.18/No.5 正真正銘のウェリッシュ・ウイスキー
2004.06.10/No.4 ウイスキー・ガロアー・アゲイン ! !
2004.06.08/No.3 資金難よりも環境アセスメント ! !
2004.03.31/No.2 ブルイックラディのオーガニック・ウイスキー
2004.03.22/No.1 ミッシェル・クーブレイ氏とベア・バーレイ
 
 
 
 
キルベガンで蒸留開始 !!
 
 

KILBEGGAN

 
 
No.17/2007.06.10
 
 
スコッチ通信No.31「Whisky Talk」より
 
  「キルベガンを見ずしてウイスキーを語るなかれ!」といったのは、ウイスキー評論家のジム・マーレイ氏だが、さらにその言葉を強くする慶事があり、多くのウイスキーファン、評論家を熱くさせている。それは半世紀ぶりとなる、キルベガンの復活である。アイルランド中部、ウエストミース県のキルベガンにブルスナ蒸留所が創業したのは1757年のこと。実はこれは現存する蒸留所としては、アイルランド最古となっている。1608年創業を謳うブッシュミルズの正式な登録は、1784年だからだ。そのキルベガンに再び蒸留液が流れ出たのは今年の3月19日のこと。キルベガンが操業をストップしたのは1953年の3月だから、実に54年ぶりの再開ということになる。また今年は、キルベガン誕生から250周年という節目の年でもある。
そのポットスチルが、実にユニーク。なんとタラモア蒸留所で19世紀後半まで使われていた150年くらい前のものなのだ。タラモアは1890年代に拡張を行い、その時にポットスチルを大型なものに入れ替えている。アルフレッド・バーナードがタラモアを訪れた時(1886年)、4基あるポットスチルのうち2回目の蒸留を行うインターミディエイト・スチルの容量を5500ガロンと記しているから、もしかしたら、それかもしれない。今はローワインまでをクーリーで蒸留し、2回目の蒸留のみをキルベガンで行っているが、将来的にはすべてキルベガンで行うという。まさに必見。キルベガンを見ずしてウイスキーを語るなかれ、である。
 
     
 
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パンチ・ドリンカー!?
 
 

 

 
 
No.16/2007.03.10
 
 
スコッチ通信No.30「Whisky Talk」より
 
  『ウイスキーマガジン』の最新号(60号)にパンチの話が出ていたので、今回はそれを紹介しよう。パンチの語源はあまり知られていないが、ヒンドゥー語の数詞、5を表す“パンチ”から来ている。ヒンドゥー語はインドの公用語で、ヨーロッパの諸語と同じ、アーリア系の言語である。南インドは別として広くインドで使われている。1から5までは、エイク、ドォー、ティン、チャール、パンチという。音の感じはともかくとして、フランス語のアン、ドゥー、トゥワ、ドイツ語のアイン、ツバイ、ドライ、英語のワン、ツー、スリーと同一の語幹を持つ言語でもある。
それはともかく、パンチというドリンクはもともとインド発祥の飲み物で、アラックというインドの蒸留酒にライムジュース、スパイス、砂糖、水を混ぜて作られたものだとか。5種類をミックスすることからパンチと名付けられたという。これが17世紀にイギリスの東インド会社によって、本国、およびヨーロッパに伝えられた。今日ではいろいろなレシピが伝えられているが、ロンドンあたりで作られたのは、西インド諸島からもたらされたラム酒がベースで、ウイスキーベースというのはほとんどない。グラスゴーパンチという名のレシピもあるが、こちらもラム酒がベース。グラスゴーは新大陸との交易の中心港で、伝統的にラムを飲む習慣があったからだという。ちなみにエジンバラパンチはスコッチがベースとなっている。
 
     
 
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さらばコロンブス!!
 
 

Living ORKNEY

 
 
No.15/2006.12.12
 
 
スコッチ通信No.29「Whisky Talk」より
 
  秋にオークニーを訪れた際に面白いものを見つけたので、今回はそれを紹介しよう。『Living ORKNEY』と題された雑誌で、2005年の暮れに創刊されたばかり。A4版60ページ足らずの月刊誌だが、なかなかどうして興味深い記事が並んでいる。人口2万人ほどのオークニー諸島で、こんなフルカラーの雑誌がでていることも驚きだが、最新号(10月号)で驚くべき記事を見つけた。「グッバイ・コロンブス」と題された特集で、コロンブスがアメリカ大陸を発見したとされる1492年より前に、オークニーのカークウォールを出港した船団がカナダのノヴァスコシア、さらにアメリカのマサチューセッツに到達しているというのだ。

詳細については来年1月15日発行予定の『THE Whisky World』第8号で紹介しようと思うが、要するに14世紀半ばにオークニー伯サー・ヘンリーの一行がアメリカ大陸に到達しているという。実はサー・ヘンリーはシンクレア家の当主で、このシンクレア家は『ダ・ヴィンチ・コード』で有名になったロスリンチャペルの創建者であり、テンプル騎士団の一員だったという。驚いたことにロスリンチャペルは現在もシンクレア家の所有で、同家の末裔のニーブン・シンクレア氏が「先祖がコロンブスより先にアメリカに到達している」と主張する、張本人。グッバイ・コロンブス、“コロンブスよさらば”というタイトルには、そんなシンクレア氏の想いが込められているのだ(TWWを乞御期待)。
 
     
 
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偉大なるパフォーマー
 
 

 

 
 
No.14/2006.9.14
 
 
スコッチ通信No.28「Whisky Talk」より
 
  スコッチ業界の再編劇については、再三このコーナーでもお伝えしてきたが、ここへきていくつかの人的な異動があったので、今回はそれを紹介しよう。
『ザ・ウィスキー・ワールド』最新号(vol.6)のNews News Newsのコーナーで、イングランドのノーフォーク地方に新しく蒸留所がオープンする話を紹介したが、最近、この蒸留所にイアン・ヘンダーソン氏がマネージャーとして招聘されるというニュースが、とび込んできた。ヘンダーソン氏は言わずと知れた、元ラフロイグ蒸留所の名物所長。定年退職後は、シグナトリー社のエドラダワー蒸留所の蒸留責任者として招かれていたが、今度はスコッチからイングリッシュ・ウイスキーへの華麗なる(?)転身となった。何故、という気がしないでもないが、それだけノーフォーク蒸留所は「本気」だということなのだろう。氏の造るイングリッシュ・ウイスキーが今から楽しみである。
もう一人はイージー・ドリンキング・ウイスキー社のデイビッド・ロバートソン氏。もちろん、元マッカランの若き“天才”である。そのデイビッドがイージー社を仲間2人と起業したのが2003年。業界の大きな話題となったが、今回は同社を辞め、なんとホワイト&マッカイ社への転職だという。同社にはリチャード・パターソン氏という名ブレンダーがいるが、その下でブレンダーとして働くのだろうか。リチャードとデイビッドの2人に共通しているのは、偉大なるパフォーマーとしての才能(!)。もしかして、継ぐのはその路線だったりして。それって、うがち過ぎ・・・。
 
     
 
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オーガニックなベンローマック!?
 
 

BENROMACH

 
 
No.13/2006.6.14
 
 
スコッチ通信No.27「Whisky Talk」より
 
  先日GM社の海外営業担当、デレク・ハンコック氏が来日して、英国大使館で展示・試飲会が行われた。その時にいち早く、新商品の話を伺ったので、今回はそれを紹介しよう――。
それは有機栽培大麦を使った“オーガニック・ベンローマック”である。オーガニック・ウイスキーはスプリングバンクやブルイックラディで、すでに試みられているが、ベンローマックがユニークなのは、徹底して有機栽培、無農薬にこだわった点。しかも大麦だけでなく、使用する酵母も樽も、すべてオーガニックにこだわったのだという。オーガニックの酵母と樽を使用するのは、今回のベンローマックが初めてだとか。
このウイスキーは、もうひとつユニークな所があって、それはバーボンバレルではなくて、新樽のアメリカン・ホワイトオーク樽を使っている点。これはグレンモーレンジの「ミズーリ・オーク・リザーブ」に次ぐものだろう。
仕込みはベンローマックが再オープンした1998年からで、年に1回、ワンバッチだけ仕込んでいる。したがって本数はかなり限られていて、全世界で2,400ケース、1万4,400本のみ。ボトリングは6月で、日本には秋頃に入荷予定という。オーガニックの大麦に酵母、しかもオーガニックの新樽・・・・・・。それって何、という気がしないでもないが、テイスティングが、今から楽しみなウイスキーだ。
 
     
 
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物議を醸すインナーステーブ製法
 
 

THE SPICE TREE

 
 
No.12/2006.3.15
 
 
スコッチ通信No.26「Whisky Talk」より
 
  エジンバラに本部を置くSWA(スコッチウイスキー協会)が、ヴァッテッドという表記をやめて、モルト同士を混ぜることも、モルトとグレーンを混ぜることも、「ブレンデッド」という表記を使うようにと通達を出したのは昨年のことである。つまり、今まではヴァッテッド・モルトと言っていたのが、これからは「ブレンデッド・モルト」と言うように、というのだ。いたずらに混乱を招くばかりと当初は反対していた業界も、このところSWAの通達に従って「ブレンデッド・モルト」と、表記するところが増えてきた。やはりSWA強し、ということか。
そんなSWAに対して、またまた物議を醸しそうな製品が登場して話題になっている。コンパス・ボックス社のジョン・グレイザー氏が昨年ボトリングした「スパイス・ツリー」である。これはウイスキーでは初となる“インナーステーブ”という手法で、樽の中にオーク材を入れて(!)、樽材成分の溶出、熟成を早めたものだ。つまりワインでいう“オークチップ”に似た製法をウイスキーに採り入れたもので、通常の熟成では得られない、エキストラのオーク香とスパイシーさが顕著という。いわばウイスキーの中にオーク材を漬けこんだようなものだ。
法律的には違反しないというが、さすがにSWAや業界からの風当たりは強く、グレイザー氏も、今回のボトリングが最初で最後、今後は継続しないという。ならば、飲むなら今のうち・・・・・・。
 
     
 
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完璧なるピートのガイドブック!?
 
 

The definitive guide to peat

 
 
No.11/2005.12.20
 
 
スコッチ通信No.25「Whisky Talk」より
 
  数々のユニークなボトルやコミッティボトル、ニューズレターなどで世界中のファンを楽しませてくれるアードベッグから、またまたユニークな製品がリリースされたので、今回はそれを紹介したい。
『The definitive guide to peat』――ピートの決定的なガイドというのがそれで、アードベッグの個性の元となっているアイラ島のピートについて、徹底的に調べて(?)それを小冊子にまとめたものだという。執筆したのは、かの有名なウイスキー評論家のジム・マーレイ氏。ジムとアードベッグの関係は、グレンモーレンジ社がアードベッグを買収した1997年から。これまでもアードベッグ10年や17年の基本レシピを創ったりしたという。今回再び、マネージャーのスチュワート・トムソン氏の求めに応じ、なんと数年かかってアイラ島のピートを調査したのだとか。
この小冊子には、それぞれのピートレベルを体験できる4種類のアードベッグのミニチュアがセットになっている。10年、17年、ウーガダール、そしてキルダルトンだが、キルダルトンがミニチュアになるのは今回が初めて。17年もすでにレアだという。ちなみにキルダルトンは“ノンピートのアードベッグ”として話題になったボトル。実際にはライトピートだが、ピートの燻香の差によるアードベッグを一気に試すことができるのは、面白い。入手はwww.ardbeg.comから。1セット19.99ポンド。
 
     
 
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新雑誌創刊ラッシュ
 
 

Fine Expressions

 
 
No.10/2005.09.16
 
 
スコッチ通信No.24「Whisky Talk」より
 
  イギリスで第2のウイスキー雑誌が出たので、今回はそれを紹介しよう――。『ファイン・エクスプレッションズ(Fine Expressions)』という雑誌で、編集長は『A to Z Whisky』『The Scottish Beer Bible』の著者として知られるジャーナリストのガヴィン・D・スミス氏。他にチャールズ・マクリーン氏らが、コンサルタント・エディターとして参加している。実はこの雑誌はウイスキーだけの専門誌ではなく、ワインやラム、シャンパン、ビールなども採り上げられている。創刊号の特集を見ると、巻頭が南アフリカのワイナリー探訪記で、40ページ以上をこれに費やしている。ウイスキーは今年175周年を迎えるタリスカーと、マッカラン、グレンロセス、ホワイト&マッカイなど。もちろん業界の最新ニュースからテイスティング・リポートまで、きめの細かい編集で、それぞれ読みごたえがある。総ページ数80ページで、オールカラー。値段は3.95ポンド、日本円にして約800円と、先行する『ウイスキー・マガジン』より若干だが安い値段になっている。日本からも定期購読できるようなので(年6回発行)、興味のある方は、www.fineexpressions.co.ukまで、アクセスしてみてはいかがだろうか。
 
     
 
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奇妙キテレツな蒸留器 ! ?
 
 

A. Smith Bowman

 
 
No.9/2005.06.16
 
 
スコッチ通信No.23「Whisky Talk」より
 
  小さくて見づらい写真で申し訳ないが、このスチルが何だかおわかりだろうか? スコットランドの新しい蒸留所のポットスチル、焼酎の蒸留器・・・・・・。いやアルマニャックか、もしかしてスペインのラマンチャ地方のブランデー蒸留器。残念ながら、そのどれとも違う。実はこれ、バーボンウイスキーで使われるダブラーなのだ。それもケンタッキーのそれではなく、ヴァージニア州のフレデリックスバーグにある、スミス・ボーマン社のダブラーなのである。それにしても実にユニークな形をしている。まるで発酵タンクの上にボールとワーム管を無理やりくっつけたような形をしている。ケンタッキー、テネシーのすべての蒸留所を回ったが、こんな形をしたダブラーを見るのは初めてであった。

バーボンは通常ビアスチルという連続式蒸留器で蒸留した後、ダブラーで2回目の蒸留を行う。ダブラーはポットスチルと違ってバッチ蒸留ではなく、連続式蒸留である。スミス・ボーマン社はヴァージニア州にある唯一のバーボン蒸留所で、「ヴァージニア・ジェントルマン」というウイスキーを造っている。かつては米国一の巨大な工場だったが、現在はビアスチルはなく、ケンタッキーのバッファロートレイス蒸留所でローワインを造ってもらい、それをヴァージニアに持ってきて、この独特のダブラーで2回目の蒸留を行っているのだ。それにしても見れば見るほどユニークな形をしていて、改めて蒸留器の面白さを教えてくれるダブラーであった。
 
     
 
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ついに真打登場 ! !
 
 

Glenmorangie Artisan Cask

 
 
No.8/2005.03.16
 
 
スコッチ通信No.22「Whisky Talk」より
 
  シェリー樽の雄がマッカランだとすれば、バーボン樽の雄は間違いなくグレンモーレンジである。マッカランが良質のスパニッシュ・オークを求めて北スペインのガリシア地方に進出したのに対して、グレンモーレンジは究極のアメリカン・ホワイト・オークを求めて、ミズーリ州のオザーク山脈の北斜面に行きついた。日照時間が短く痩せた土壌が、年輪の詰まった良質のホワイト・オークを生むという。マッカランが原木の一本一本を見立てているように、グレンモーレンジも年輪の詰まり方を一本一本チェックし、それを伐採する。しかもバーボン・メーカーが通常行うキルン・ドライ(人工乾燥、2週間で乾燥が終了する)ではなく、2年間の天日乾燥を行う。

製樽はブラウン・フォーマン社のブルーグラス・クーパレッジだが、ここでもグレンモーレンジならでは徹底したこだわりを発揮する。バーボン樽は直接強火で内側をきつく焦がすが、グレンモーレンジの樽は遠赤外線効果を利用した焙煎である。しかも180リットルのバレル樽ではなく、グレンモーレンジ仕様のホグスヘッド樽。これをジャック・ダニエル社に委託して4年間、同社のテネシー・ウイスキーを詰めてもらう。それもローテーションを一切行わない旧来の倉庫である。その“デザイナー・カスク”からのボトリングがついに登場した。『グレンモーレンジ・アーティザン・カスク』がそれだが、ついに「真打の登場」といった観が強いのだ。
 
     
 
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今年最大の買収劇
 
 

GLENMORANGIE

 
 
No.7/2004.12.15
 
 
スコッチ通信No.21「Whisky Talk」より
 
  スコッチ業界の今年のビッグニュースはなんといっても、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン・グループ(LVMH)によるグレンモーレンジ社の買収だろう。モーレンジ社の半分以上の株式を保有していたマクドナルド家が蒸留事業からの撤退を決め、株式を売却するというニュースが飛び込んできたのは8月下旬のこと。業界のみならず、世界中のモルト愛好家の間に衝撃が走った。モーレンジ社はグレンモーレンジ、アードベッグ、グレンマレイの3蒸留所とハイランド・クイーンやBNJなどのブランドを所有する超優良企業。特にグレンモーレンジやアードベッグの躍進は、近年目を瞠るものがあった。その矢先の売却話だっただけに、いったいいくらの値が付くのかと、どこが買収するのかに、俄然注目が集まった。幹事行であるロンドンの有名なロスチャイルド銀行が試算した売却総額が約600億円。当初関心を示したウィリアム・グラント&サンズ社、エドリントン・グループが脱落し、10月の段階で残っていたのがバカルディとペルノ・リカール、ブラウン・フォーマン、そして件のモエ・ヘネシーであった。ブラウン・フォーマンはジャック・ダニエルを所有する米企業で、もともと北米での販売権を持っていただけに有力視されていたが、結局LVMH社がライバルに競り勝ち、グレンモーレンジ社の買収に成功した。同社はシャンパンやコニャックの数多くのブランドを所有しているが、スコッチの蒸留所は初めてである。果たして今後どうなるのか。当分目が離せない。  
     
 
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湖水地方にも新しい蒸留所が・・・
 
 

湖水地方

 
 
No.6/2004.06.24
 
     
  先日バラ島に新しい蒸留所が建設されるというニュースが届いたばかりなのに、今度はイングランドの湖水地方に蒸留所が造られるというニュースが飛び込んできた。それも、バラ島と同じアンドリュー・カリー氏だという。

このニュースを知ったのは、スコ文研会員のT氏のホームページ。常々、ウイスキーに関する2大ホームページはこのT氏のS.Tanida's Home Barと、MUNEさんのM 's Barだと思っているが、それにしても情報が早い。そのスピード、情報の正確さには頭が下がるばかりである(釣りのウデもこの調子で上げてほしいものだが・・・)。

氏のホームページから情報の元となったBBCのニュースに飛んでみると、湖水地方のステイブリー(Staveley)というところに、カリー氏らが中心となって蒸留所を建設するという。すでに建設許可は下りているようで(ただし楽観はできない)、木材置き場だった土地を利用して、そこに年間25,000リットル規模の蒸留所を造るという。仕込水は敷地のそばを流れるケント川の水で、できるだけ湖水地方産の大麦を使って仕込みを行う。ステイブリーは湖水地方の玄関口であるケンダルとウィンダミア湖の中間くらいの所にあり、ケント川は北のハーター・フェル山付近にその源を発している。

地図で見ると分かるが、意外と地の利を得ているようで、これなら年間数万人規模の観光客も呼び込むことができるだろう。湖水地方を訪れる観光客は年間1,000万人を超えている。イギリスでは何といっても、ナンバーワンの景勝地だからだ。

湖水地方の特産物というと、ケンダル・ミントケーキとグラスミア・ジンジャーブレッドが有名だが、これに新たに“レイクディストリクト・モルト(湖水地方モルト)”が加わると、地元では歓迎ムードなのだという。前者は板チョコ状の甘いミント菓子で、このミント菓子が一躍有名になったのは、イギリス隊が世界で初めてエベレストを登った際(1953年)、ヒラリー卿が非常食として頂上まで持って行ったからだ。グラスミアのジンジャーブレッドはパンというよりショウガを効かせたビスケットで、湖水地方を訪れる観光客に人気がある。
 
 
kendal mint cake
http://www.kendal.mintcake.co.uk/
grasmere gingerbread
http://www.grasmeregingerbread.co.uk/
 
     
  湖水地方はその大部分をナショナル・トラストが所有・管理しているが、同地方にゆかりの人物といえばワーズワース(William Wordsworth:1770-1850)とビアトリクス・ポター(Beatrix Potter:1866-1943)。ワーズワースはイギリスを代表する詩人で、湖水地方の北部にあるコッカマスで生まれ、一生を湖水地方で過ごした。ポターはいうまでもなく、『ピーター・ラビット』で有名な絵本作家である。

まさかピーター・ラビットをラベルにあしらったウイスキーが出るとは思えないが、ワーズワースなら可能性があるかもしれない。ちょうど来週から湖水地方に行くので、時間があればステイブリーにも寄ってみたいと思っている。もっとも、行っても現時点ではまだ何もないだろうが・・・。
 
     
 
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正真正銘のウェリッシュ・ウイスキー
 
 

Wales

 
 
No.5/2004.06.18
 
     
  やや旧聞に属するが、今年3月1日に「ペンダリン(Penderyn)」と称するウェリッシュ・ウイスキーが発売され、短期間で完売になってしまった。3月1日はウェールズの守護聖人、セント・デイビッドの日で、ウェールズではもともとリーク(ポロネギ)やラッパ水仙を贈り合って、この日を祝う風習がある。

ペンダリンはウェリッシュ・ウイスキー社が1998年に設立した蒸留所で(蒸留所名はゴーリア「Gawlia」蒸留所)、蒸留が開始されたのは2000年の9月14日のことである。ペンダリンという名称は蒸留所が建設された集落の名前で、南ウェールズのビーコン・ブレコン国立公園の南端に位置している。かつて炭坑と鉄工で栄えたマーサー・ティドヴェル(Merthyr Tydfil,ウェールズ語はスコットランドにもまして発音が難しい・・・)の町から数マイルほど西に行った所で、周辺はのどかな田園地帯だという。

ウェリッシュ・ウイスキー社は「プリンス・オブ・ウェールズ」などを出していた会社で、ブレコンの町に本社と工場があるが、実際にウイスキーを蒸留していた訳ではなく、スコッチなどを買ってきて、これにハーブでフレーバーを付け、ウェリッシュ・ウイスキーと称して販売していた。もともとウェールズでは西暦4世紀頃から大麦と蜂蜜、ハーブなどを原料に蒸留酒を造っていた伝統があり(どこまで史実かは不明)、それを踏襲しているというのが同社の言い分であったが、英国関税当局とスコッチウイスキー協会のクレームで、製造が不可能となってしまった。そこで、という訳ではないのだろうが、正真正銘のウェリッシュ・ウイスキーを造ろうと建設されたのが、ペンダリンの蒸留所だったのである。

ウェールズはアイルランド、スコットランドと並ぶ「ケルトの国」で(ゲール族ではなくブリトン族)、ウイスキー造りは古くから行われていたようなのだが、記録としてはあまり残っていない。1705年に南西ウェールズのペンブロークに蒸留所があったという記録があり、この蒸留所はエヴァン・ウィリアム家が経営していたという。後にウィリアム家はアメリカに移住してしまい、蒸留所はダニエル家が引き継いだ。エヴァン・ウィリアムもダニエルも聞いたことがある名前だが、それもそのはずで、ケンタッキー・バーボンの「エヴァン・ウィリアムス」は移住した同家が関与した蒸留所であり、ダニエルはテネシーの「ジャック・ダニエル」のことだとか。同社を創業したジャック・ダニエル氏はアメリカ生まれだが、両親はウェールズからの移民だったという。

19世紀後半には北部ウェールズのバラ湖付近でフロンゴッホ(Frongoch)という蒸留所が操業していたが、オーナーが交通事故で死亡してしまった。さらに当時宗教運動の高まりで禁酒が社会風潮になっていたことで、この蒸留所は1896年に閉鎖されてしまった。以来100年以上にわたって、ウェールズでは一滴のウイスキーも造られていなかった。フロンゴッホの閉鎖以来、100年ぶりに復活したのが、ペンダリンの蒸留所だったのである。

蒸留所の建物は、およそ蒸留所らしからぬ外観だというが、これはフロンゴッホのデザインを真似たものだという。この蒸留所がユニークなのは、ウェリッシュ・ウイスキー用に今回新しくデザインされたポットスチルである。デザインしたのは南イングランドのサリー大学のデイビッド・ファラデー博士。ちなみにファラデー博士は、かの有名なマイケル・ファラデー(『ロウソクの科学』で、イギリスばかりか世界中の子供たちに知られている)の子孫だという。そのこともユニークだが、この新しいタイプのポットスチルは、通常のポット(釜)の上部に、連続式蒸留器で用いられている24段のシーブトレイが付いているという。シーブトレイ(あるいはシーブプレート:sieve plate)とは直径数ミリの穴が無数に空いた銅製のプレートのことで、これによって連続式蒸留器と同じような、高い精留効果が得られる。ペンダリンでは上から7段目のプレートから、アルコール度数90%のスピリッツを採り出している。ただし蒸留はポットスチルと同じ単式、つまりバッチ式蒸留だという。同蒸留所のホームページを見ると、「スコッチは通常2回、アイリッシュは通常3回・・・・・・それに対してウェールズはたった1基のスチルで蒸留」と、その違いを強調している。

ポットスチルもユニークだが、ここでは発酵液ウォッシュは、カーディフ(ウェールズの首都)にあるビール会社に委託して造ってもらっている。ブレインズ(Brains)という会社がそれで、ビールと同じような仕込みで8%のモロミを造り、それをペンダリンに運んで蒸留する。現在使用している大麦はウェールズ産だが、将来的にはプリンス・オブ・ウェールズ、チャールズ皇太子のハイグローブ農場で作っている有機大麦の仕込みも考えているという。以前造っていた「プリンス・オブ・ウェールズ」はあまり感心したウイスキーではなかったが、ペンダリンのものなら正真正銘、ウェリッシュ・ウイスキー。チャールズ皇太子のお気に入りになったとしても、おかしくはない。

3月1日に発売された「ペンダリン」はまだ熟成4年未満(スコッチと同じようにEUの規定で熟成3年以上が義務づけられている)だが、ボトルデザインも洒落ていて、新しい時代のウェリッシュ・ウイスキーを予感させる。ビーコン・ブレコン地方は上質の金が産出することでも知られるが(産出量はごく僅か)、このボトルもデザインにゴールドをあしらい、その辺りを強調している。熟成に使用する樽は主にバーボン樽で、それはもちろんケンタッキーの「エヴァン・ウィリアムス」とテネシーの「ジャック・ダニエル」の空き樽だという。他にはヨーロピアン・オークのシェリー樽やマデイラ樽。特にマデイラ樽がポイントになるという。

地図を見れば分かるが、ウェールズからはブリストル湾をはさんで対岸にブリストル港があり、ワイン樽の入手には、もっとも地の利を得たところだという。ブリストルはシェリーをはじめとするヨーロッパ・ワインの、イギリスにおける最大の水揚げ港だからだ。上質のワイン樽が、比較的入手しやすいのだろう。いずれにしても、また新しく、ユニークな蒸留所の誕生であり、今後に期待が持てそうな話である。ぜひ手に入れて飲みたいと思っている。
 
     
 
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ウイスキー・ガロアー・アゲイン! !
 
 

Whisky Galore

 
 
No.4/2004.06.10
 
     
 

キルコーマン、ブラックウッドに続いて、今度はバラ島(BARRA)に新しい蒸留所が建設されるというニュースが飛び込んできた。計画しているのはアンドリュー・カリー氏で、彼はアラン蒸留所の創業者ハロルド・カリー氏の息子である。私も何度か会ったことがあるが、父親譲りの温厚な紳士で、起業家というより、学究肌のナイスガイといったイメージのほうが近い。すでにそのための会社――ウィスゲ・ベーハ・ナン・エイリン社(島々のウイスキーの意)――も設立していて、建築許可がおりれば、来春にも着工したいとしている。

建築予定地としているのはバラ島西岸のボーブ(Borve)の村で、仕込水はその名も、「Loch Uisge、ウイスキー湖」という湖から引くという。生産規模は年間約2万リットルほどで(スプリングバンクの5分の1くらい)、8年から10年物のシングルモルトとして販売する。当面はクリームリキュールなどを製造・販売するというから、このやり方はアラン蒸留所と同じ手法かもしれない。島のビジネスマンで同社の取締役の一人であるピーター・ブラウン氏は「将来はバラ島の大麦のみで仕込みたい」という。

バラ島はアウターヘブリディーズ諸島の最も南に位置する島で、面積は約80平方キロ、人口1,200人ほどの小さな島である。アイラ島と比べても8分の1ほどの大きさでしかない。しかしこの島はイギリス人にとってはアイラ島以上に知名度もあり、訪れる観光客も決してひけを取らないのだ。その理由は、この島が、映画『ウイスキー・ガロアー(Whisky Galore)』の舞台になったこと。ウイスキー好きにとっては、『ウイスキー・ガロアー』がどんな物語なのかは、すでにお分かりのはず。これはウイスキー5万箱を満載したSS・ポリティシャン号(SSはスクリュー蒸気船の略)が、バラ島の北にあるエリスケー島で1941年に座礁した事実をもとに、コンプトン・マッケンジーが書上げた小説の題名である。映画は1949年にイーリング・スタジオ社によって製作され、好評を博した。実際、私もこの映画のビデオを持っているが、いかにもイギリス映画らしいユーモアにあふれた佳品である。シブイ役者の演技と、何よりもバラ島の荒涼とした風景がいい。映画にエキストラとして登場する島民はすべて、実際の島民である。

しかし、さらに驚いたことに、蒸留所建設とは別に、現在この『ウイスキー・ガロアー』のリメイク版の計画も進行中なのだという。先のカンヌ映画祭では、マイケル・ムーア監督の『911』と、最優秀男優賞をとったのが日本の中学生だったことが話題になったが、リメイク版を計画しているプロデューサーのイアン・マクリーン氏は、すでにカンヌでいくつかの契約に漕ぎつけているという。スコットランドのメディアによると、ショーン・コネリーもこのリメイク版に歓迎のコメントを寄せているというが、はて、ショーン・コネリーがやるような役があったかという気がしないでもない。物語の主人公は戦地帰りの島の若者と、戦時統制の指揮をとるイングランド人オフィサーなのだから・・・・・・。

 
Whisky Galore
 
     
 
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資金難よりも環境アセスメント! !
 
 

puffin

 
 
No.3/2004.06.08
 
     
  このところ雑多な原稿に追われてすっかりご無沙汰していたが、ようやく一段落(気のせい?)したので、新しいニュースについていくつか紹介したい。

アイラ島のキルコーマンとシェットランドのブラックウッドついては、すでにいくつか報告されているが、キルコーマンは5月末のアイラフェスティバルには結局間に合わず、しかし今年11月にはいよいよ着工の運びだという。まるで「ソバ屋の出前」みたいな話ではあるが、信用して待つしかなさそうだ。
ブラックウッドについても、4月下旬に実際に訪れたA氏の話によると、建設予定地は決っているが、それらしい動きはまったくなかったという。

どちらも資金繰りがうまくいかないせいだと思っていたが(もちろん、それもある)、どうもそればかりではなさそうだ。6月7日付の『Whisky Notes 』によると、これらの新しい蒸留所の建設の最大のネックになっているのは、環境アセスメントだという。イギリスでは1999年に新しい法律が施行され、蒸留所建設には何よりもこの環境アセスメントが必要になったのだという。もっとも問題になるのが、マッシング後のドラフと蒸留廃液、スペントウォッシュ(ポットエール)とスペントリースの処理の問題だ。

ドラフは土地の農家に買い取ってもらうことも可能だが(牛などの飼料にはなるが、羊の飼育には難しい)、スペントウォッシュとスペントリースは、廃液としてそのまま処理することは現在禁じられている。再処理プラントは本土にしかなく、キルコーマンもブラックウッドも、そこまで運ぶコストが馬鹿にならないのだ(運搬には特殊なタンクローリーが必要となる)。同様に温廃水の問題もある。かつてスコットランドの蒸留所では温廃水は周辺の環境にそのままタレ流しにしていたが、現在はそれも禁じられている。昔と違って、どんどん環境基準が厳しくなっていて、それが蒸留所建設を難しくしているのだ。たとえ資金面をクリアしても、環境アセスメントが待っている・・・・・・。
簡単に蒸留所が建てられると考えるのは、どうも甘過ぎたようなのである。

(※キルコーマンもブラックウッドも、どちらもこの環境アセスメントをクリアできることがほぼ決定したことにより、いよいよ今年中には建設許可が下りるだろうという)

 
     
 
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ブルイックラディのオーガニック・ウイスキー
 
 

ブルイックラディ蒸留所

 
 
No.2/2004.03.31
 
     
  『モルト・アドバケイト』の『Whisky Notes』の最新号に、ブルイックラディが有機大麦を使ってウイスキーを仕込んだというニュースが載っていた。この大麦はインバネス近郊の農家から仕入れた大麦で、品種は明らかにされていないが、ニューポットでの出来はなかなかのものだという。マッキューワンによると通常の蒸留とはやり方を変えて、蒸留の時間を長めに設定し、クリーミーな風味をより多く残すようにしたという。出来上がったニューポットは、青草やハーブのような風味が顕著で、カラント系の花やゼラニウム、苔に覆われた小川のほとりのような香りがあるとか。

ブルイックラディでは、すべての原料をスコットランド産100%にこだわっており、さらに出来るだけリサイクル可能な、環境にやさしいウイスキー造りを目指している。電力はポートナヘイブンに新しく建設された波力発電所の電力を利用し、ボトリングのパッケージもリサイクル可能なものに替えていくという。将来的にはアイラ産の大麦を使った仕込みもやる予定だとか。
 
 
ブルイックラディのポットスチル

オーガニック・ウイスキーというとスプリングバンクが1993年に一度仕込んだことがあるが、実際に有機栽培をしている農家は非常に少ないと聞く。それだけ、手に入れるのが大変なのだ。現在のウイスキー好適大麦は有機栽培には向かないだろうから、いったいどの品種を使っているのか興味はつきない。仕込みや蒸留のやり方を変えたのも、現行品種との違いがあるからだろう。その場合のアルコール収量も、ぜひ聞きたい気がする。ま、それにしてもアイラ初のボトリングプラントといい、今回のオーガニック・ウイスキーといい、いかにもマッキューワンらしい。独立系蒸留所のこれが良さでもあり、今後もますますいろいろなことにチャレンジしてほしいと思う。キルコーマンではないけれど、すべてアイラ産100%のウイスキーが出来るのは、そう遠くないのかもしれない。
 
 
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ミッシェル・クーブレイ氏とベア・バーレイ
 
 

 
 
No.1/2004.03.22
 
     
  先日、ソニーがスポンサーの番組の部分的な翻訳・監修を頼まれて、一日中赤坂のスタジオにカンヅメになった。まだオンエアの日時が決っていないので、詳しい内容をここで話すわけにはいかないが、その番組はフランスのミッシェル・クーブレイ氏にスポットを当てた、1時間ほどのドキュメント番組であった。クーブレイ氏については、今さら紹介する必要もないと思うが、例の「シングル・シングル・ベア・バーレイ」などで知られるフランスのボトラー(?)である。これも先日、楽天のサイトで初めて知ったことだが、氏はベルギー生まれで、現在はフランスのブルゴーニュ地方に自社畑とセラーを持ち、独自の樽にウイスキーを詰めて熟成させ、ユニークな製品を次から次へと送り出している。写真で見ると巨大なセラーだが、なんでも、氏が自ら掘ったものだとか。『スコッチ通信』のテイスティングでも昨年取り上げた「ヴァン・ジョーヌ・ウッド」などは、そんな氏の面目躍如たるものがあった。

ま、それはさておき、その番組というのは1986年にクーブレイ氏がベア・バーレイを使って仕込んだ、先の「シングル・シングル・ベア・バーレイ」にスポットを当てて、取材が行われていた。ベア・バーレイ(Bere Barley)というのは、スコットランド在来種の大麦のことで、現在はオークニー諸島くらいでしか栽培されていない、大変貴重な品種のことである。イングランド産大麦や外国産大麦、1960年代に登場したゴールデン・プロミスなどに追いやられて、ここ100年くらいベア・バーレイがスコッチの原料として使われることはなかったというが、それ以前の数100年間、スコットランドで大麦、スコッチの原料といえば、このベア・バーレイしかなかったのだ。

大麦は大別すると二条大麦と六条大麦に分かれるが、このベア大麦は六条大麦の変形である四条大麦。現在ではビールもウイスキーも、二条大麦を使って仕込まれるのは周知の事実である。現在のウイスキー好適大麦(たとえばカーマルグ、ペプキン、チャリオット、チャリスetc)に比べ、実が固く、タンパクや窒素の含有量も多く、アルコール収量が、麦芽1トンあたり300リットル以下(100%アルコール換算)と、5分の3から、ヘタをすると半分くらいしかないのが廃れた理由といわれる(現在チャリオット・ハーベスト種で麦芽1トンあたり約460リットル)。さらに収穫後、発芽するまでの休眠期間が長く、すぐに仕込みに移れないというのも、廃れた理由のひとつである。オークニー諸島で細々と栽培が続けられているのは、伝統的に家畜の飼料として利用してきたのと、オークニーでは各家庭で、このベア・バーレイを粉にして焼いたバノックというパン(スコーン)が、現在も食されているからである。

そのベア・バーレイを復活させ、昔ながらのウイスキー造りに挑戦したのが、ミッシェル・クーブレイ氏である。「幻のウイスキー大麦――ベア・バーレイ」。考えてみれば『夏子の酒』で有名になった日本酒の亀の翁のようなものかもしれない。あちらも確か、幻の日本酒好適米・・・・・・だった。それはともかく、番組ではクーブレイ氏にベア・バーレイを売ったオークニーの農場主が登場していた。本島のメインランド島ではなく、ウエストリー島の住人。この人の英語の訛りがとにかくすごくて、ほとんど理解不能。実は通訳の方がまったく意味がとれないということで、私の所にお鉢が回ってきてしまったのだ。しかし、何度聞いても聞き取れない・・・・・・。ウイスキーに関することならまだしも、大麦や農業のことになると、専門用語がさっぱり・・・・・・。しかし悪銭苦闘してどうにかこうにか、無事作業は終了。彼の話で分かったのは、クーブレイ氏に売ったのは6トンのベア・バーレイだったこと、クーブレイ氏は実際には収穫にはタッチしていないことなどであった。クーブレイ氏が麦刈りをしている写真があったが、実際にはあれはベア・バーレイではないらしい。

 
  その6トンの大麦を麦芽にしたのは、ハイランドパーク蒸留所である。やはりオークニーのピートで麦芽づくりをしたいというのが氏の希望で、ハイランドパークがそれに応えたのだという。同蒸留所のフロアモルティングのキャパでいえば6トンは、通常のワンバッチ以下のサイズで、これなら十分に対応できる。実際にクーブレイ氏自らが職人についてフロアモルティングをし、ピートを焚いて乾燥させ、そしてこれは今回初めて知ったのだが、それをアベラワー蒸留所に持って行ってグリストに粉砕し、さらにエドラダワーに運んで、仕込みから蒸留、樽詰めまでを行っている。ちょうど1986年というと、アベラワー、エドラダワーがフランスのペルノ・リカール社の傘下に入った直後のことである。同社とクーブレイ氏の深いつながりがなかったら、こんなことは実現しなかったはずである。
ハイランドパーク蒸留所
ハイランドパーク蒸留所
 
 


クーブレイ氏が買った6トンの大麦からどれくらいの麦芽ができたのか不明だが(通常は20%くらい減って5トンくらいになる)、エドラダワーの1回の仕込みサイズは約1トン。これなら5回の仕込みで完了ということになる。肝心のアルコール収量だが、この時エドラダワーで最終的に樽に詰めたのは、氏が持ちこんだシェリー樽(バット)3個半だったという。もしそれが事実なら、樽詰め総量約1,800リットル。63.5%で詰めたとして、アルコール収量は約1,140リットル(100%アルコール換算)。これを5トンの麦芽で割ると、1トン当たり230リットルということになる。つまり、この時のベア・バーレイ麦芽1トン当たり、230リットルのアルコール収量だったという計算だ。やはり現在の品種に比べて、驚くほど低い数字といわねばならない。

この樽はしばらくエドラダワー蒸留所に置かれていたが、面白いのはスコットランドの輪木積みではなく、わざわざフランスから木の板(パレット)を運んできて、その上に輪木を敷いて樽を置いたという話だ。当時の職人が現在は近くで地ビールをつくっていて、彼がインタビューに答えていたが、それは通常スコットランドではやらない方式だったので、よく覚えているという。さすがにここまで徹底的にこだわったウイスキー造りというのは、後にも先にもこれが最初で最後で、残念ながら1986年以降は一度も行われていない。再びベア・バーレイイから醸されるスコッチは、本当の意味で、幻のウイスキーとなってしまったようなのである。

せめて今度オークニーに行ったのなら、そのベア・バノックを食べてみたいと思うし、できれば実際に栽培しているところを見てみたいものだ。もちろん機会があればまた、「シングル・シングル・ベア・バーレイ」を飲んでみたいと思っている。

 
 
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